オープンソースの仮想化ソフト「Xen」を開発・提供しているXen Projectは2008年1月16日,Xenの新版3.2を公開した。2007年9月に公開予定だったバージョンである(関連記事)。Xen 3.2のソース・コードのほか,Red Hat Enterprise Linux 5,CentOS 5.1,Fedora 8,openSUSE 10.3向けのバイナリ・パッケージを用意した。ただし,バイナリ・パッケージはプレビュー版であり,セキュリティ・パッチは提供されない。

 新版は主に6点の改良が加えられた。(1)XSM(Xen Security Modules)の追加,(2)ACPI S3(Advanced Configuration and Power Interface State 3)への対応,(3)PCIパス・スルーへの対応,(4)リアル・モードの完全なエミュレーションによる各種ブート・ローダーへの対応,(5)VGA画面表示の高速化,(6)ゲストOSの時間管理方式に合わせたタイマ・モジュールの提供,である。Xen Projectは,このうちの(3)と(4)については,試験的に機能を提供したとしている。

 XSMは,Xen用のセキュリティ・フレームワークである。LinuxのLSM(Linux Security Modules)に由来している。Xenハイパーバイザに対して特権的な処理を依頼するために用意されたハイパーコールをフックし,個々に権限を確認するための機能である。

 ACPIではコンピュータの実行状態を6つのステートなどに分類して規定している。具体的には,通常の駆動状態(S0),CPUのキャッシュをフラッシュしてCPUの命令実行が停止した低消費電力状態(S1),CPUへの給電を停止した低消費電力状態(S2),メイン・メモリーのみに給電が保証されたスリープ状態(S3),メイン・メモリーの内容をハード・ディスクに書き込む休止状態(S4),ソフトウエアによる電源遮断(S5),という6つのステートがある。ACPI S3は,Windows XPなどでスタンバイ状態と呼ばれているモードであり,新版からXenでも利用できるようになった。

 PCIパス・スルーは,Xenの仮想マシンからPCIデバイスに直接アクセスできるようにする仕組みである。性能面でボトルネックになりやすいネットワーク・アクセスなどを高速化できる。ただし,米Intel社や米Advanced Micro Devices社が提供する入出力仮想化機能をサポートしたチップ・セット(Intel VT-d,AMD IOMMU)を利用する必要がある。