プラント関連事業を展開する日立プラントテクノロジーは、センサーネット事業の強化を進める。2008年1月に同社の研究者と事業責任者が記者と会見し、無線技術「ZigBee」を使ったセンサーネット・システム「ZigNET」を、ビルやデータセンター向けの空調・電源管理に向けて拡販を進める意向を示した。環境問題に対する意識の高まりを見据えた「グリーン」用途への拡販により、2010年に10億円の売上高を見込む。

 ZigNETは、同社が1年前の2007年1月から本格販売を開始しているセット商品。基本セットはZigBee方式による通信機能を備えた小型センター3台、データを収集・管理するサーバーなどからなる。温度、電流、水位などのモニタリングに必要なハードとソフトを一式そろえている。「このセットを購入すれば、その日からデータのモニタリングが可能」(機械システム事業部 部長の菊池智之氏)。温度センサーをデータセンターのラックなど各所に配置し、定期的にデータを収集。その結果を空調の制御やラックの再配置に生かす、といった用途を想定している。小型センサーは内蔵の電池で最大2年間駆動する。

 最大の特徴は、コストを抑えつつ、比較的大規模なエリアにおけるセンサー・ネットワークが構築できること。センサー同士が自動的に無線によるメッシュ・ネットワークを組み、バケツ・リレー式にデータを授受し合う。このため、配線や断線時の対応など、設置時に考慮する要素が無線LANなどよりも少ない。菊池氏は「規模にもよるが、半日から1日あればセッティングが済む」とその手軽さを強調する。

 ZigNETはプラント内部や河川流域など広いエリアにおけるセンシングも可能にするため、ヌリテレコム製のZigBeeモジュールを採用している。同社製のモジュールは電波の出力を強化しており、スペック上モジュール間の通信距離は最大1km。一般的にはZigBeeモジュールの通信距離は数十m単位とされている(ZigBeeの解説記事)。

 多くの機器が利用する2.4GHz帯を通信帯域に使うZigBeeは、無線LANとの干渉などが懸念として挙げられてきた。日立プラントが採用しているヌリテレコムの通信モジュールは「通信、ミドルウエア、アプリケーションなど各層に組み込んだ仕組みにより干渉の可能性を極小化している」(ヌリテレコムの鈴木真幸代表取締役)という。

 ZigNETの販売価格は120万円程度。システム稼働実績は20件前後という。

 ZigBeeは国内では普及が進んでいるとは言いがたい状況だが、海外ではガスや電気などの検針システムにおける通信手段として、ZigBeeの採用が進みつつある。ヌリテレコムの本国である韓国では、ガスや電気の検針システムの通信手段として採用されている。同様のシステムはノルウェーなど欧州の電力や水道にも採用されている。

■変更履歴
本文中、菊池氏の肩書きを事業部長としていましたが、正しくは事業部 部長です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/01/24 12:35]