総務省は1月16日,MVNO(仮想移動体通信事業者)に関する法制度の解釈を整理した「MVNO事業化ガイドライン」(正式名称は「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」)の再改正に先立って実施した意見募集の結果を公表した。MVNOとは移動体通信事業者(MNO)から無線設備を借りて独自ブランドでサービスを提供する事業者のこと。

 今回,意見募集していた主な内容は,(1)MNOのコンタクト・ポイントの明確化,(2)MNOによるMVNOの事業計画の聴取範囲の明確化,(3)事業者間接続などに関する法制上の解釈の具体化──の3点。(1)と(2)はモバイルビジネス研究会の最終報告書(関連記事)を受けたもの。(3)は総務大臣によるNTTドコモと日本通信の相互接続紛争の裁定(関連記事)を踏まえたものとなっている。13件の意見が集まった。

 (1)は,MVNO協議会などから「事業者間接続,卸電気通信役務の契約形態に関係なく,一元的な対応が可能なコンタクト・ポイントを明確化して公表すべき」といった意見が出た。

 (2)は,「MNOはMVNOのサービス内容や事業モデルを把握する必要はなく,公正な競争環境の維持という意味でも具体的な聴取は不要」(MVNO協議会)というMVNOの主張に対し,MNOは全く反対の意見。「契約数やユーザーの利用動向に関する計画値と算出根拠は最低限聴取が必要」(NTTドコモ),「MNOにおけるサービス提供,安定的なネットワーク運営などに影響を及ぼさないことを確認できる情報の聴取が必要不可欠」(ソフトバンクモバイル)とする。

 (3)もMVNOとMNOで意見が分かれた。MVNO協議会はNTTドコモと日本通信の裁定を踏まえ,法的に定められた接続拒否事由に該当しない限り,MVNOによる「エンドエンドの料金設定権を認めるべき」「帯域幅課金の接続料設定に応じるべき」といった点の反映を要望。これに対してNTTドコモは,「接続料金や接続条件は接続約款に記載がある場合を除き,まずは当事者の協議に委ねられるべき」「(MVNOとの相互接続でMNO側に生じる)開発費は原則としてMVNOが応分の費用を負担すべき」などにとどめるべきとした。

 他のMNOも「(NTTドコモと日本通信の裁定は)MNOとMVNOの関係を整理するうえで一定の指標になるが,網羅的に定義できない。費用負担の原則的な考え方を示すだけにとどめるべき」(KDDI),「NTTドコモと日本通信の個別事案なので反映は慎重に検討すべき」(ソフトバンクモバイル)など,消極的な意見が多かった。

2.5GHz帯の認定事業者に対する厳しい要求も

 上記以外では,2.5GHz帯無線ブロードバンドの認定事業者に対する意見が目立った。2.5GHz帯の認定にはMVNOの促進が条件となっている。2.5GHz帯の認定に漏れたアッカ・ネットワークス,イー・アクセス/イー・モバイル,オープンワイヤレスネットワーク,ソフトバンクBB,ソフトバンクモバイルから厳しい要求が相次いだ。

 具体的には,「2.5GHz帯の認定事業者はMVNOによる無線設備の利用促進に向けた計画の策定を前提に事業免許を交付され,ネットワークは今後構築していくことになる。既存のMVNO事業化ガイドラインとは内容を分けて策定すべき」(ソフトバンクモバイル),「(モバイルWiMAXや次世代PHSといった)新しい技術方式を利用したサービス提供が1社独占的になる場合は(複数のMNOが参入して)競争状況になるまでは指定電気通信設備制度のような(規制の)枠組みが必要。接続コストの公平性の観点から接続会計のような枠組みも導入すべき」(アッカ・ネットワークス)といった具合だ。

 オープンワイヤレスネットワークとソフトバンクBBにいたっては,「エリア展開計画は6カ月以上前に,ネットワークの新機能や新サービスは1年以上前にMVNOに対して開示すべき」「MVNOの展開を前提に設備を構築するので,MVNOの提供に伴うシステム改修費用はMVNOに負担させるべきではない」といった点まで要求している。

 総務省はこれらの意見を踏まえ,2月初旬をメドに再改正案を公表。再度,パブリック・コメントを募集して3月末までにガイドラインを再改正する予定である。

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