総務省は1月15日,NTT東西地域会社が1月9日に認可申請した,2008年度以降のダーク・ファイバの接続料(関連記事)について,情報通信審議会電気通信事業部会に諮問した。今回の諮問に当たって接続料の具体的な算出根拠が明らかになった。

 ダーク・ファイバの接続料の算出は,「将来原価方式」と呼ぶ方法を用いている。2008~2010年度の今後3年間を対象に,予想される「費用(設備コスト)を,予想される需要(稼働心線数)」で割った金額を接続料とする。

 費用は設備管理運営費,他人資本費用,自己資本費用,利益対応税で構成する。2008~2010年度の累計費用はNTT東日本が3747億5600万円,NTT西日本が3825億5700万円。設備管理運営費に含まれる減価償却費は,光ファイバの耐用年数を現行の10年から地下ケーブルは21年,架空ケーブルは15年に延ばしてコストを引き下げた。

 一方の需要は,(1)NTT東西によるBフレッツ/フレッツ・光プレミアムの利用分,(2)他事業者による利用分,(3)専用線などの利用分をもとに算出。NTT東日本は(1)が551万9000心,(2)が112万1000心,(3)が52万5000心の計716万5000心,NTT西日本は(1)が566万4000心,(2)が62万2000心,(3)が41万1000心の計669万6000心である。

 これらをもとに「費用/需要」を計算し,12(カ月)で割った値が光ファイバの利用分に相当する月額接続料になる。NTT東日本は3747億5600万円/716万5000心/12=月額4539円,NTT西日本は3825億5700万円/669万6000心/12=月額4761円。これに,光ファイバをNTT東西の収容局で終端するFTM(fiber termination module)の利用分,施設設置負担金の扱いを調整する加算料を加えたものが,最終的な接続料となる。1月9日に申請した接続料はNTT東日本が月額4713円,NTT西日本が月額5048円である。

 総務省はこれについて,「適切かつ明確」「公正妥当」「特定の事業者に対して不当な差別的取り扱いがない」といった理由から「認可が適当」としている。

予測と実績の過不足を精算する制度は保留

 しかし,同時に申請した事後精算の仕組み「かい離額調整制度」の導入については保留とした。

 かい離額調整制度とは,将来原価方式で用いた予測と実績が大幅にかい離した場合に過不足分を翌期以降の接続料の原価に加える仕組みのことである。同じ将来原価方式で2001年に算定した現行の接続料(月額5074円)は当時の予測と実績が大きくかい離しており,NTT東西はコスト割れの状態となっている。

 2006年度の1心当たりの実績コストは8915円。これは,2001年に予測した3226円の約2.8倍の水準である。現在はこの差額をNTT東西が負担しているが,今後はこうしたコスト割れが発生しても翌期以降の接続料で回収できるように「かい離額調整制度」の導入を要望した。

 ただ,こうしたかい離が生じる原因には,競争事業者に起因するものと,NTT東西に起因するものの両方がある。前者は,他事業者による利用が予測よりも進まなかったことが挙げられる。2001年当時は他事業者による利用が2006年度末に150万3000心あると予測していたが,実際は5分の1以下の28万3000心にとどまっている。

 一方,NTT東西はこうした状況にもかかわらず設備投資を増やしており,接続料算定の分子となる費用を増やしている。こうした競争事業者に起因する設備投資リスクや,設備投資にかかわる先行投資分なども踏まえて検討する必要があるとした。

 情報通信審議会は今回の接続料について本日から2月14日までパブリック・コメントを募集する。その後,寄せられた意見に対して再度,意見募集を実施。その結果をもとに接続委員会で議論し,3月をメドに認可する予定である。

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