国土交通省は米国土安全保障省(DHS)と共同で、船荷のコンテナを追跡するシステム「Marine Asset Tag Tracking System(MATTS)」の実証実験を、早ければ2008年4月に開始する。コンテナに専用のアクティブ型無線ICタグを取り付け、輸送過程をトレースする。日本の荷主の倉庫でICタグを取り付けた後、港を経由して米国の届け先に到着するまでの位置情報などをほぼリアルタイムに荷主が把握できるのが特長だ。MATTSの実証実験は昨年に続き2回目で、日本国内の陸路輸送時の追跡や、コンテナの不正開封を監視する専用タグの利用実験を追加する。

 今回の実験では、米iCONTROLが開発した専用ICタグ「iTAG」と、「mLOCK」を使用する。iTAGとmLOCKそれぞれ100個程度利用する予定だ。どちらのICタグも、GPS(全地球測位システム)の測位機能、モーション・センサー、ログ自動記録機能などを備える。GPSデータは設定した時間間隔で計測し、ログ・データとしてメモリーに保存できる。モーション・センサーを利用して、コンテナがいつ移動したかといった情報も記録できる。保存したデータは、専用の送受信機などと通信できる状態になったときに送信する。mLOCKはさらに、コンテナの扉の開封を監視する電子シール機能を搭載している。mLOCKは南京錠のような形で、開錠した情報をデータとして記録できる。

 使用する無線ICタグの周波数は2.45GHz帯で、ZigBee(IEEE80.215.4)を使って港のターミナルなどに設置した送受信機「iGATE」とデータをやり取りする。列車やトラック輸送などの陸路では、iGATEを各所に設置できないため、携帯電話網(米国内ではGSM、日本国内ではWCDMA)を使ってデータを送受信する。データは、インターネット回線を経由して、日本、もしくは米国に設置するサーバーに蓄積する。荷主は、専用のWebブラウザ・ベースのソフト「iVIEW」を使って、コンテナの位置を地図上に表示し確認できる仕組みだ。

 第2回の実証実験では予定はしていないが、加速度センサーや温度センサーを専用タグに取り付けることもできる。これらの機能を使えば、例えば、生鮮食品を運ぶコンテナで常時きちんと温度管理ができていたかなどをログから分析するといったことも可能だ。「高価な荷物などを常時トレースし、荷主が常に荷物の安全を確かめられるといったビジネス利用の可能性もある」と国土交通省 港湾局 港湾経済課の浦辺信一 港湾情報化推進室長は説明する。

 MATTSは米国のDHSが進めているプロジェクトの一つで、テロ対策の一環として国際海上コンテナ輸送の分野での物流セキュリティを向上させるための技術開発や実証実験を実施している。米国の場合、船荷のコンテナの中に人が隠れて米国に不法侵入するなどといった不正が多く、いかに怪しいコンテナを見つけ出すかが課題となっていた。しかし、コンテナ1つひとつを調べるには手間がかかり、効率よくコンテナの安全を確認する必要があった。そこで、コンテナにICタグを取り付け常時監視することで、不法な開封などの異常をリアルタイムに把握し、米国に到着する前に危険なコンテナを特定できるようにする。

 国交省は2007年4月~8月に実施された第1回の実証実験から参加している。第1回では、横浜港から米国ロサンゼルス港を経由して、陸路(鉄道)でイリノイ州のロッシェルにコンテナを届けるまでの経路を追跡。100個のコンテナに「iTAG」を取り付け実験した結果、稼働率が99%だったという。実験中に、荷主が急きょコンテナの行き先を変更したことがあったが、コンテナの位置がICタグによって把握できていたために、すぐに変更を指示することができた。