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 調査会社のノークリサーチは1月9日、中堅中小企業市場(SMB市場)の展望をまとめた「SMB短観」を発表した。2008年のSMB市場は、「ERP(統合基幹業務システム)パッケージの導入機運が再び高まる。一方で、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の採用は伸びない」と予測する。

 ERPパッケージの導入機運が高まる理由について、ノークリサーチの伊嶋謙二社長は「2000年問題対応後の基幹系システム刷新と、内部統制強化が急務になっているため」と説明する。「システム自体のオープン化は進んでいるものの、データやアプリケーションが、業務別のぶつ切り状態になっている。アクセス権の制御や操作ログの収集ができないシステムも少なくない。早急に業務合理化や内部統制強化の実現するためには、ERPパッケージを採用するしか方法がない」と分析する。

 同社調査によれば、SMB市場におけるERPパッケージの導入率は、年商5~50億円規模(中小企業クラス)で21.1%、年商300~500億円(中堅企業Hクラス)でも35.5%と高くはない(表1)。一方、「現在は導入していないが、近い将来に導入したい」という利用意向率は、中小企業クラスが35.4%、中堅企業Hクラスが25%だった。「大企業市場に比べてERPパッケージの潜在市場が大きい。今年から一気に顕在化する」(同)。

 一方、導入が進んでいないSFA(営業支援)やCRM(顧客関係管理)といった戦略系システムについては、「潜在市場は大きいが、顕在化するには時間がかかる」(同)と予測する。「中堅中小経営者の多くは、経営にITが役立つことを理解していない。市場を顕在化させるには、さらなる啓発活動が不可欠だ」と、伊嶋社長は強調する。

 最近、会計分野やCRM分野で盛り上がっているSaaSは、「システムを素早く導入する手段としてではなく、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)・サービスのツールとして、ゆっくりと浸透していく」と予測する。

 SaaSの認知度と利用意向を同社が調査したところ、中小企業クラスで認知度32.4%(利用意向28.4%)、中堅企業Hクラスでも同57.6%(同36.8%)だった(表2)。「パッケージ・ソフトとSaaSの機能面や運用面の違いを気にする経営者は少ない。単にネット経由でソフトを提供するのではなく、会計処理や人事管理といった業務のアウトソーシング・サービスとセットで提供するサービスを、中堅中小経営者は求めている」と、伊嶋社長は指摘する。