写真●OSパーティション専用の小型フラッシュ・ドライブ「Vaulter」
写真●OSパーティション専用の小型フラッシュ・ドライブ「Vaulter」
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 「HDDを完全に代替するSSD(Solid State Disk)は,大容量を求めると高価過ぎ,消費者向けではない。OSだけフラッシュに保存し,ユーザー・データはHDDに保存するPCを実現するために,小型フラッシュ・ドライブを開発した」--米SanDiskのDirectorであるDoreet Oren氏は,同社の新製品「Vaulter(写真)」をこう説明する。

 Vaulterは,PCのPCI-Expressバスに接続する小型フラッシュ・ドライブで,16Gバイトの容量がある。メモリー・カード程度の大きさなので,「SSDのようにノートPCのHDDを置き換えるのではなく,HDDに追加して搭載できる」(Oren氏)。Oren氏は,「OSの入るCドライブを高速なVaulterとし,ユーザー・データを保存するDドライブをHDDにすれば,速度と大容量が同時に実現できる」と語る。

 SanDiskも販売するSSDは,既存のHDDを代替する目的で開発されており,大きさは2.5型または1.8型のHDDを模しているほか,インターフェースにシリアルATAを採用している。形状やインターフェースがHDDと同じなので,SSDは既存のパソコンに組み込むのが容易であり,既に多くのPCベンダーがSSD搭載PCを製品化している。しかし現状のSSDは,HDDに比べてかなり高価だ。

 Oren氏は,「2008 International CESでも,128GバイトのSSDをリリースしたベンダーがあったが,あのような高価な製品が本当に必要だろうか」と語る。「PCのストレージにフラッシュ・メモリーを使う最大のメリットは速度であって,容量ではない。OSのDLLファイルのような,小さくてディスクに大量に分散しているファイルは,フラッシュ・メモリーであれば高速に読み出せる」とOren氏。速度はフラッシュ・メモリーで稼ぎ,容量はHDDでカバーするのが,コスト・パフォーマンスに優れたやり方だという。

 同社が「2008 International CES」のブースで実演したデモによれば,OSパーティションをVaulterに置換したPCは,他のハードウエアが同じ構成で7200回転/分のHDDを搭載するPCよりも,Windows Vistaの起動が20秒高速だという(動画)。

動画●Vaulterを使用したパソコンは,7200回転/分のHDDを搭載するマシンよりも,Windows Vistaの起動が20秒以上高速だという

 SanDiskによれば,2008年内にもVaulterを搭載したノートPCが登場する予定だという。Oren氏は,「米Microsoftが主導した『ハイブリッド・ハードディスク』も,OSファイルをフラッシュにキャッシュさせる考えだったが,あまりに複雑な仕組みであるため,結局失敗した。SSDは,企業向けに堅実な需要が見込めるが,価格面で消費者向けではない。Vaulterのような真にハイブリッドなソリューションが,消費者に受け入れられるだろう」と語っている。