写真1●Canmoreを発表するIntel社長兼CEOのPaul Otellini氏
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写真2●Canmoreに搭載されるさまざまな機能
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写真3●Canmoreで採用されたトランジスタ技術の模式図
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 米Intelの社長兼CEOであるPaul Otellini氏は1月7日(米国時間),「2008 International CES」で基調講演を行い,同社が携帯電話やデジタル録画機などの家電向けにもIAプロセッサを供給することを強調した。Otellini氏はアプリケーション実行環境として米Adobe Systemsが開発・提供する「Adobe AIR」を強力に推し,「OS非依存なソフト開発が実現する」と強調した。

 Otellini氏は基調講演で,携帯電話に画像/音声認識技術を組み込んだ次世代ナビゲーション・システム技術や,3Dアバターを使用した新しいコミュニケーションのあり方など,さまざまなコンセプト・デモを見せた。それを通じて行われた主張はもちろん,「プロセッサの処理能力は,まだまだ強化が求められている」という,いつもの「Intelの主張」である。

 Otellini氏は携帯電話機のような日常的に使用するデバイスにも,画像/音声認識,3次元CGの利用などが必要であり,それにはより強力な処理能力が求められると訴える。だからこそIntelは,携帯電話機などの家電製品にも,IA(Intelアーキテクチャ)プロセッサを提供していくとアピールした。

 ここで興味深いのは,Otellini氏がAdobeのFlash後継アプリケーション・プラットフォーム技術「Adobe AIR」を,「携帯電話機にリッチなユーザー・インターフェースをもたらす最適のソリューションだ」(Otellini氏)と強くプッシュしたことである。Intelは携帯電話機でのAIRの実装を実現するためにAdobeに協力しており,「Adobe AIRなら,OS非依存なアプリケーションの開発が可能になる」(Otellini氏)と強調した。

 Intelと米Microsoftとの関係を表す「Wintel」という言葉を聞かなくなって久しいが,IntelのCEOが「OS非依存」を重要なメリットとして訴えるようになったという点で,Otellini氏の基調講演は非常に興味深いものであった。

「コンシューマ向けの初めてのSoC」

 Otellini氏は講演で,45nm(ナノ・メートル)技術で製造するデジタル家電向けプロセッサ「Canmore」(開発コード名,写真1)も発表した。Canmoreは,プロセッサ・コアに加えて,従来はグラフィックス・チップとして独立していたグラフィックス機能,チップセットに搭載されていたメモリー・コントローラやI/O機能,TPMのような外部モジュールに搭載されていたセキュリティ機能などのシステムすべてを1つのプロセッサ・チップ内に搭載する(写真2)。

 このようなチップのことをSoC(システム・オン・チップ)と呼び,「Canmoreは,コンシューマ市場に投入される始めてのSoCだ」(Otellini氏)と語る。45nm技術で製造されるCanmoreには,もう1つの特徴がある。それは,原材料にHafniumを使用する「High-K」トランジスタ技術だ。トランジスタのシリコン酸化膜の替わりに「High-K Material」と呼ぶHafniumを使用した層を使用する(写真3)。Otellini氏は,Intel共同創業者であるGordon Moore氏の「High-Kや金属材料の実装は,1960年代後半以来初めて起きたトランジスタ技術の大変革だ」という言葉を紹介している。