米MicrosoftのBill Gates会長は1月6日(米国時間),自身にとって11回目で,今回が最後となるInternational CES(Consumer Electronics Show)の基調講演を,米Las Vegasで行った(写真1)。氏の引退をネタにしたビデオで笑いを取った以外は,発表済みの製品/技術のアピールにほとんどの時間を費やすという,最後にしては寂しい内容の基調講演となった。

写真1●Xbox 360用音楽ゲーム「ギター・ヒーロー3」のコントローラを手に,ロックバンド「Guns N' Roses」の元メンバーで人気ギタリストのSlash氏と共に写真に納まるBill Gates会長
写真1●Xbox 360用音楽ゲーム「ギター・ヒーロー3」のコントローラを手に,ロックバンド「Guns N' Roses」の元メンバーで人気ギタリストのSlash氏と共に写真に納まるBill Gates会長 [画像のクリックで拡大表示]

 Gates氏がCESで基調講演を始めて行ったのは,1994年のこと。それから昨年まで10回の基調講演を行ってきた。2006年6月に発表した通り,氏は2008年6月までにMicrosoftでの仕事を退き「慈善活動にフルタイムで専念する」(Gates氏)ことから,11回目となる今回の講演が「最後のCES基調講演」となる。

 引退にちなみ,基調講演では「Gates氏の“普段の業務風景”をレポートしたジョーク・ビデオ」も5分間に渡って放映。このビデオは,Microsoftの主要な幹部のほか,ロック・バンドU2のボノ氏や,元副大統領のアル・ゴア氏,大統領選挙の候補者であるヒラリー・クリントン氏やオバマ上院議員も登場する豪華版で,来場者の笑いを誘っていた。

 ただし,ジョーク以外の講演内容は,あまり笑みを浮かべて聞ける内容のものではなかった。

 Gates氏は,2000年以降の10年間のことを,人々の仕事や生活がデジタル化されていった「デジタル・ディケイド(デジタルの10年間)」と呼んでいる。Gates氏は「最初のデジタル・ディケイドは非常に大きな成功を収めたが,これは始まりに過ぎない。次のデジタル・ディケイド(Next Digital Decade)には,大きく3つの面で技術が進歩するだろう」と語った。

 1つ目は「HD Everywhere(どこでも高精細)」というもので,「部屋や机の上に置かれたディスプレイがみな高解像度になり,人々をつなげるデバイスになる。仮想世界でゲームをしたり街を歩いたりする体験がより豊かなものになり,3次元仮想世界がWebの世界を変えていくことになるだろう」(Gates氏)と語る。

 2つ目は「Services-connected devices(デバイスは常にサービスと共に)」で,あらゆるデバイスはネットワークに接続され,ブラウザが搭載され,さまざまなオンライン・サービスを利用できるようになる。

 3つ目は「Natural User Interface(自然なユーザー・インタフェース)」で,「最初のデジタル・ディケイドのインタフェースはキーボードとマウスだった。既に,Windows PCやiPhoneではタッチ機能が普及しており,これらが今後の主流になる。また,電話などのデバイスに,音声認識機能や画像認識機能が搭載されて,人々がより簡単な方法で,情報を操作できるようになる」(Gates氏)と語った。

Windows Vistaは1億本を販売

 Gates氏がビジョンを語ったのはここまでで,基調講演ではこの後,同社の事業に関する現状説明が淡々と行われた。2007年1月に一般販売が始まったWindows Vistaはすでに1億本が販売され,オンライン・サービスのWindows Liveは4億2000万ユーザーを超え,Windows Mobile搭載デバイスの出荷は近いうちに2000万台を突破するという。

 Microsoftが現在最も力を入れているのは,ご存知の通り「Windows Live」で,基調講演でもそのデモが行われた。しかし,Windows Liveの写真管理ソフト「Windows Live Photoギャラリー」の主要機能として紹介されたパノラマ写真作成のデモは,2005年に同社が発売したフォト・レタッチ・ソフト「Microsoft Digital Image Pro」の新機能紹介で行ったものと,使用する写真データまで含めて全く同じもの。4年前に100ドルで販売していた製品を無料化したことをアピールしたかったかどうかは不明だが,新味は無かった。

 続いて,同社が2007年5月に発表したテーブル型パソコン「Surface」のデモを行ったほか(写真2),同社が売り出し中のFlash対抗技術「Silverlight」が,米NBCによる北京オリンピックのWeb中継の技術として採用されたことなどが発表された。ただし,NBCが中継に使用するWebサイトは,MicrosoftとNBCの共同事業である「MSNBC」であり,Microsoftの技術が採用されるのは当たり前だろう。

写真2●テーブル型パソコン「Surface」のタッチ式ユーザー・インタフェース
写真2●テーブル型パソコン「Surface」のタッチ式ユーザー・インタフェース [画像のクリックで拡大表示]

■変更履歴
Bill Gates氏の講演回数を12回目としていましたが、正しくは11回目です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/01/08 01:59]