EPCグローバルの物流部会(TLS IAG)と家電部会(CE IAG)は08年1月22~24日、中国から米国に輸出する貨物に無線ICタグを取り付け、輸送過程をトレースする実験を実施する。中国で生産した東芝のパソコンを空路で米国に輸送し、その過程を追いかける。TLS IAGの実証実験はこれで2回目だが、今回は、「荷主である家電メーカーと物流業者が、EPCグローバルの標準インタフェース『EPCIS』を介して、追跡情報を互いに交換できるようにした点が新しい」(物流部会共同議長である日本郵船グループMTIの石澤直孝 技術戦略グループプロジェクトマネージャー)という。前回は、物流業者側で追跡システムを稼働させ、荷主から参照できるようにしていた

 今回の実験の特徴は、追跡したい貨物の“粒度”が異なる荷主と物流業者がICタグ・データを交換できるようにしたところだ。荷主の家電メーカーは、製品のこん包(梱包)単位の居場所を知りたいし、航空物流業者ならコンテナ単位で管理したい。EPC標準(ISO準拠)では、こうした貨物の包含関係(親子関係)を定義できる。この梱包は、このパレットに積載され、そのパレットはこのコンテナに積載され、そのコンテナはこの航空機に積載されるといった具合だ。

 各貨物の親子関係は、サプライチェーンの各プレーヤがそれぞれの流通過程で記録する。例えば家電メーカーは梱包とパレットの親子関係を記録し、陸運業者はパレットとコンテナの関係、航空貨物業者はコンテナと航空機の関係を管理する。それを記録するためのデータベースを「EPCISリポジトリ」と呼ぶ。EPCISリポジトリには、ICタグから読み取ったIDである「EPCコード」と、流通履歴などの付加データを対にして記録する。今回の実験では、東芝のEPCISリポジトリをNTTコムウェアが、航空貨物業者として参加する日本貨物航空(NCA、日本郵船の子会社)と陸運を担う米UPSなどのEPCISリポジトリをGS1香港が運営し、互い連携して動作するようにした(GS1は、EPCグローバルを傘下におくバーコードなどの標準化団体)。

 各梱包の居場所を追跡するアプリケーションは、おおよそ次のように機能する。梱包に付けたICタグのEPCコードをキーに、東芝のEPCISレポジトリにアクセスして、パレットのEPCコードを調べる。次に物流業者にアクセスして、パレットのEPCコードをキーに、コンテナや航空機のEPCコードを調べ、その居場所を引き出すのだ。このように、サプライチェーンの各プレーヤが必要な情報だけを分散管理して、互いに情報を調べられるようにしたのがEPCISなどの標準規格の魅力である。