写真●電波監理審議会会長の羽鳥光俊・中央大学理工学部教授
写真●電波監理審議会会長の羽鳥光俊・中央大学理工学部教授
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 総務省は12月21日,2.5GHz帯の事業免許(特定基地局の開設計画の認定)について,ワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムを認定する。これは,総務省が電波監理審議会に諮問し,本日答申を得たものである(関連記事)。

 2.5GHz帯を巡っては,KDDIが出資するワイヤレスブロードバンド企画,ソフトバンクとイー・アクセスが出資するオープンワイヤレスネットワーク,NTTドコモとアッカ・ネットワークスが出資するアッカ・ワイヤレス,ウィルコムの4社が申請していた。

 ワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムに決まったのは,申請があった4社の事業計画を比較審査した結果,両社に優位性があると判断されたためだ。比較審査の項目としては,(1)より早期に広範な地域でサービスを開始すること,(2)サービスを展開する能力が充実していること,(3)財務基盤が強固であること,(4)電波の利用効率を高める技術を保有していること,(5)MVNO(仮想移動体通信事業者)を促進すること──などが示された。

オープンワイヤレスネットワークもMVNOでは高く評価されたが…

 総務省は,これらの項目について比較審査した結果,ワイヤレスブロードバンド企画,ウィルコム,オープンワイヤレスネットワーク,アッカ・ワイヤレスの順に優れた計画であると判断。電波監理審議会もこれが適当であるとの答申を示した。

 例えば早期のカバー・エリア拡大については,2012年時点の人口カバー率がワイヤレスブロードバンド企画は93%,ウィルコムは91%,オープンワイヤレスネットワークは78%,アッカ・ワイヤレスは64%とする計画だった。また,ワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムが屋内への小型基地局の整備を計画しているのに対し,ほか2社は無線LANの併用で屋内カバーを計画していた点も差がついた。

 これらに加え,ワイヤレスブロードバンド企画はセル設計をすでに完了していることが,サービスの展開能力の点で高く評価された。

 財務基盤については,「まず,効率的な設備投資ができるかどうかを見た」(電波監理審議会会長の羽鳥光俊・中央大学理工学部教授,写真)という。ワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムは,カバー範囲が広いにもかかわらず設備投資を抑えられる計画で,この点が評価されたとした。ウィルコムについては,次世代PHSの設備投資の半分程度を,現行サービスに今後計上される減価償却費から繰り入れる計画である点も高く評価した。

 MVNOの促進では,オープンワイヤレスネットワークの計画を最も高く評価したという。また,MVNOへの提供実績が豊富なウィルコムもオープンワイヤレスネットワークに次いで高く評価された。

 オープンワイヤレスネットワークが落選した理由としては,「MVNO以外の審査項目は,他社に比べて特段の優位性が認められない」(羽鳥会長)という点を挙げた。また,アッカ・ワイヤレスは,ADSL事業者のアッカ・ネットワークスが中心となるという点で新規性が評価されたが,「他社に比べて項目ごとの評価が低い」(羽鳥会長)ということで落選となった。

ソフトバンク,イー・アクセスの要望書にも回答

 12月20日にソフトバンクとイー・アクセス,オープンワイヤレスネットワークが提出した要望書についても回答を示した(関連記事)。

 まず,申請事業者による意見陳述を求めた件については,「意見聴取せずに答申することにした」(羽鳥会長)。その理由として,もともと審議を非公開としていたこと,さらに事前に関係者ヒアリングを4回開催していることを挙げた。なお,審議が非公開であるのは,当事者,第三者,公共の利益を害する恐れがあるためとしている。

 より厳正な審査を求めた点については,「事業者名を伏せて審査を行った」(羽鳥会長)という。事業計画の公開については「正当な利益を害さない範囲で公開したい」(羽鳥会長)とし,実際の審議で利用した資料を公開する方針を示した。事業計画の比較を認定後5年でなく事業開始後5年とすることを求めた件については,「認定の有効期間は認定後5年と電波法制で定められており,その範囲内で比較するのが適当」と要望を却下した。

 MVNOへの卸売りを公平にすべきという要望は,「考慮すべき意見として答申に反映した」(羽鳥会長)。具体的には,MVNO向けの相談窓口を設置すること,標準的な提供条件を策定して公開すること,総務省が示した「MVNO事業化ガイドライン」に準拠することを答申に記載した。

 ソフトバンクとイー・アクセスは主要株主の株式売却の制限を求めていたが,「株式の移動を電波法で規制することは困難。株主の安定で確実な業務遂行を求めているのであれば,開設計画通りに進んでいるかどうかをチェックする仕組みがあればいい」(羽鳥会長)と判断。答申において,認定計画の遂行を確実に行うことを特記することで対応した。

 アイピーモバイルが返上した2GHz帯の活用を考慮すべきとの要望には,「2.5GHz帯の申請期間(9月10日から10月12日)には返上されていなかった。そのため,今回の審査とは切り離して考えた」(羽鳥会長)と回答した。

 国際競争力,競争環境の創出からモバイルWiMAXに技術方式を限定すべきした点には,「2.5GHz帯の開設指針の段階で,モバイルWiMAX,次世代PHS,IEEE 802.20,iBurstの4方式を利用することが適当という答申を出している」(羽鳥会長)と要望を却下した。これに関連し,会見では技術方式の違いが当落に影響したかという質問があったが,羽鳥会長は「開設指針の段階で,技術の差を前面に出した項目を審査しないという方針になっている。技術方式の違いでは判断していない」とした。