2007年12月20日に開催された総務省の「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」で,NTTドコモとKDDI,ソフトバンクモバイルの3社がプレゼンテーションを行った。同懇談会は,2011年に予定される地上アナログ放送の終了に伴って空くUHF帯/VHF帯のうち,新しい放送用途に割り当てられたVHF帯の合計32.5MHz幅の使い方を検討している。現在KDDIとソフトバンクは,それぞれMediaFLOの利用を前提にした企画会社を設立している。これに対して,NTTドコモは,フジテレビジョンらと「ISDB-Tmm」を推進するマルチメディア放送企画 LLC合同会社を立ち上げている。

 懇談会で大きな焦点となっているのが,技術方式をISDB-Tファミリに限定するか,MediaFLOにも国内実用化の門戸を開くかである。総務省がヒアリング事項として提示した「採用する方式を一つにすべきかどうか」という点についてNTTドコモは,「限定された帯域を複数事業者で分割すると共倒れになる」,「複数の受信機能を搭載することは想定しにくく,さらに事業性を低下させる」といった理由から,1方式の方が将来の可能性が高まると説明した。これに対しKDDIは,「複数の技術方式の中から自由に選択できることが重要」,ソフトバンクモバイルは「わが国のICT分野における国際競争力向上のためには世界中のユーザーの多様なニーズに対応できることが望ましく,一つの技術に絞り込む必要がない」とし,複数方式を認めた方が良いという考えを示した。

 サービスエリアについてはNTTドコモとKDDIは,「現行の携帯電話サービスと同等が望ましい」とした。ただしNTTドコモは,実際にはビジネスモデルに依存するため,現時点では判断できないと留保を付けている。一方ソフトバンクモバイルは,原則的に全国とするものの,利用状況や収支のバランスを見ながら拡大していくことが望ましいとした。なおソフトバンクモバイルは「マルチメディア放送には緊急放送などの公共的な役割が求められるべきではない」,「いわゆる情報通信法(仮称)を踏まえて,懇談会で議論してほしい」など要請した。

 プレゼンテーション後の質疑応答ではNTTドコモが,「チューナーチップが複数方式に対応可能でも,端末のコストインパクトが大きい」としている点に委員から質問があった。NTTドコモは,「市場が立ち上がったあとは,確かに複数方式をサポートするチップの存在意義は大きいが,肝心なのは市場の立ち上げ」と,スタート時にコスト負担に問題があると指摘した。これに対して,KDDIとソフトバンクモバイルは,「長期的な視点でみるべき」と主張した。