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 長崎県庁は、現在刷新を進めている行政基幹業務システムをオープン・ソース・ソフトウエア(OSS)として公開する。県が主導して開発を進めているもので、システムの全体または一部を、他県や市町村がカスタマイズも含めて自由に利用可能にする。

 民間企業にも公開するが、ITサービス企業などがビジネスに活用する場合は一定の対価を求める。もっとも、県の情報政策を統括しこのスキームを導入した総務部理事の島村秀世氏(写真)によると「極めて低料金になる」と言う。

 この行政システムは、県庁が2005年から8年をかけて開発を進めているもの。県側が要件定義や基本設計の一部を済ませたうえで、主に地場のITサービス企業に詳細設計や開発を発注している。仕事を発注するときに、仕様書やソースコードなどの成果物は県が所有権を持つよう契約を結んでいるため、県庁が主導してOSS化することができた。地方自治体の行政システムをOSS化するのは、極めて珍しい取り組みといえそうだ。

 長崎県は行政システムに先行して、情報共有や休暇手続きといった情報系システムのOSS化に踏み切っており、徳島県などに一部システムが採用された実績がある。県が開発したシステムをOSS化する狙いの一つは、地場企業に他県でビジネスをする機会を与えるため。他の自治体がこのシステムを使おうとすると必ずカスタマイズ需要が発生する。システムを開発した地場企業にまず声がかかるという算段だ。

 県外のITサービス企業などにも広く公開するので、自社の地方自治体向けソリューションなどに一部の機能を取り込むこともできそうだ。開発中の行政システムはLinux上で稼働する。オープンシステムで稼働する行政システムの事例自体がまだ少ない。自治体のレガシー刷新商談では、使い方次第で貴重な「商材」になる可能性がある。