日本経済団体連合会は12月18日、高いスキルや知識を備えたIT技術者(高度ICT人材)を大量かつ安定的に輩出する施策として「ナショナルセンター設立」の政策提言を発表した。関係省庁や産業界、大学界に協力を呼びかけ、2009年度中の運営開始を目指す。

 ナショナルセンターは、政府が中核となり高度ICT人材の育成を支援する永続的な組織である。ICT人材の育成に欠かせない教員の能力開発や教育手法の研究、カリキュラムの策定などを行う。従来、IT人材育成の施策は文部科学省や経済産業省、総務省などが個別に予算化してきたが、今後は一本化して予算の効率活用を提案する。

 本センターに附設する形で専門職大学院も設立する。一般の大学の修士課程に相当する専門職大学院では、修士論文の代わりに「システム開発」を卒業の単位と認定したり、人気企業への特別採用枠を用意したりと、既存の大学の枠組みを超えた教育課程を創設する。同大学院は、ナショナルセンターが策定したモデル・カリキュラムが有効に機能しているかを検証する役割も担う。

 既存の大学院でIT人材を育成する取り組みとしては、文部科学省が主導する施策「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」が07年4月から始まっている。しかし、同施策は09年度末に財政支援が終了する予定で、それ以降も継続するか否かは不透明な状況にある。

 加えて、既存の大学院を利用する方式では「『もっと研究に時間を割いて論文を執筆すべき』といった声が教授会から出たりと、カリキュラムの自由度が制限されるケースがあった」(経団連 産業本部 上田正尚情報グループ長)。そこで、専門職大学院は、設立形態は既存の大学内に附設する形をとるが、「組織の運営は既存の大学から独立させることで自由度を確保する」(上田情報グループ長)。