情報通信審議会は2007年12月18日に,「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」の第33回会合を開催し,地上波放送のデジタル化で新たに発生する難視聴地域を対象にした「セーフティネット」の基本方針案を明らかにした。2007年8月に公表した同審議会の第4次中間答申の提言を受けて,全国地上デジタル放送推進協議会(全国協議会)が検討してきたものである。

 全国協議会の検討案によると,2011年の地上アナログ放送の終了期限においても地上デジタル放送が受信できない地域を対象に,放送衛星(BS)の第17チャンネルを利用して,関東広域圏のNHKの2チャンネル(総合テレビと教育テレビ)と民放キー局の5チャンネルの合計7チャンネルを再送信する。再送信の番組にはスクランブルをかけ,対象世帯だけが視聴できるようにする。画質はSDTV(標準画質テレビ)で,データ放送は提供しない。マルチ編成で放送している場合は,メインチャンネルを再送信する。運用開始は2009年度中を予定している。

 今回の検討案は,地上系のインフラによって地上デジタル放送が送り届けられるまでの緊急避難的な措置という位置付けで,運用期間や対象世帯を厳しく制限している。運用期間は開始後5年間の予定で,対象世帯は原則としてアナログ放送で見られていたのにデジタル放送で地上波放送を見られなくなった世帯に限る。

 また,対象世帯であってもスクランブルを解除できるのは,見られなくなったチャンネルの系列となる在京局に限り,必ずしも再送信される7チャンネルすべてが見られるわけではない。セーフティネットの運用にあたり,各地域の放送事業者でつくる地域協議会がどの地域でどのチャンネルが見られなくなったかをまとめたリストを作成する。セーフティネットの運営主体はこのリストを基に,利用希望者ごとにスクランブルを解除するチャンネルを決定する。

 情通審の検討委員会は今後,実施主体や経費負担の在り方などについて検討を行い,2008年6月には具体的なアクションプランを作成する予定である。