写真1●2007年12月時点のIEEE 802.11n標準化スケジュール
写真1●2007年12月時点のIEEE 802.11n標準化スケジュール
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写真2●2007年7月時点のIEEE 802.11n標準化スケジュール
写真2●2007年7月時点のIEEE 802.11n標準化スケジュール
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写真3●2.4GHz/5GHz帯両対応の「AR9280」と2.4GHz帯のみに対応する廉価版「AR9281」を用意
写真3●2.4GHz/5GHz帯両対応の「AR9280」と2.4GHz帯のみに対応する廉価版「AR9281」を用意
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写真4●ストリームの数をデータの転送状況などに応じて動的に増減させる「ダイナミックMIMOパワーセーブ」
写真4●ストリームの数をデータの転送状況などに応じて動的に増減させる「ダイナミックMIMOパワーセーブ」
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 無線LANプロセッサ大手のアセロス・コミュニケーションズは12月18日,物理速度300Mビット/秒のIEEE 802.11n draft 2.0に準拠した1チップ型無線LANチップを発表。その席上で,標準化スケジュールと製品に与える影響について説明した。「当初予定していた2008年10月の標準化が,2009年7月にずれ込む」(大澤智喜社長)という(写真1)。

 「2007年9月にdraft 3.0仕様の文書投票を実施したものの,賛同メンバーは全体の84%と議長が望む90%の賛同が得られなかった。このためスポンサー投票に進めなかった」(大澤社長)。結果,修正案を処理するためのdraft 3.x,さらにdraft 4.0以降を含めた再調整が必要になり,当初の予定より9カ月遅れることになった(写真2)。

draft 2.0準拠製品への影響は限定的

 draft 3.xから4以降の策定が確実となった今,気になるのはdraft 2.0準拠の製品が最終仕様にファームウエアの更新だけで準拠できるかという点。大澤社長は「draft 2.0の完成度は高い。議論の焦点はBluetoothなどとの干渉を避けるための仕様で,draft 3.0および将来のdraftで議論を進めたとしてもソフトウエアの変更で対処できる」とする。

 2007年秋から2008年春にかけて出荷が見込まれる企業向けIEEE 802.11n製品を出荷するベンダーの多くは,いずれもファームウエアの更新で最終版に対処できるとの見通しを明らかにしている。2007年1月に策定されたdraft 2.0は,最終版の策定時にハードウエア面での変更が生じない程度にまで細部を詰めた仕様で,これを踏まえ業界団体のWi-Fi Allianceは相互接続テストや認証プログラムを実施中。ベンダーは既に認証を取得したシスコ(関連記事)をはじめ,同認証を取得する意向だ(関連記事)。

ノート・パソコン向け省電力版11n準拠チップ
を2008年第1四半期に投入

 アセロスが発表した新製品は,IEEE802.11n draft 2.0に準拠した2製品(写真3)。2.4GHz/5GHz帯両対応の「AR9280」は,送信機と受信機をそれぞれ二つ備える2×2のMIMO構成。物理速度は300Mビット/秒。2.4GHz帯のみに対応する廉価版「AR9281」は,送信機の数を一つ減らした1×2のMIMO構成。物理速度は送信150Mビット/秒,受信300Mビット/秒である。いずれも同社として3世代目の製品に当たり,従来の2チップ構成を1チップ化。ストリームの数をデータの転送状況などに応じて動的に増減させる「ダイナミックMIMOパワーセーブ」(DMPS)などの省電力機構を追加した(写真4)。

 AR9280/9281は既にサンプル出荷済み。量産出荷は2008年第1四半期を予定する。サンプル価格は非公開,量産出荷時の価格は未定だが「802.11g製品の置き換えを促進できる程度の低価格を実現できている」(大澤社長)とする。