写真1●UWBタグ 左がきょう体。右はそれを空けたところ
写真1●UWBタグ 左がきょう体。右はそれを空けたところ
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写真2●1cm角のUWBタグ 
写真2●1cm角のUWBタグ 
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 日立製作所は12月12~14日に開催されたTRONSHOWにおいて、広帯域を使う近距離無線通信技術「UWB」を使った位置検知システム「日立AirSense UWBエントリーモデル」をお披露目した。同システムは、誤差が30cm程度の精度を持ち、無線LANタグやアクティブ型無線ICタグを使う誤差が1~3m程度の従来製品と比べて、物の位置を正確に把握できるのが特徴である。2008年1月に出荷を開始する。

 今回の製品は、「数十cmの精度を求めるアプリケーションをターゲットにする」(日立製作所ワイヤレスインフォベンチャーカンパニーの木下泰三カンパニー長&CEO)。例えば倉庫のパレット置き場。約1m四方のパレットをぎっちり並べた場合、従来の1~3mの精度しかない無線LANでは正確な位置を特定できなかった。店舗内の顧客の導線を調べたいような場合にも精度を高められる。従来製品では、顧客が商品棚の前にいるのか、裏側の商品を見ているのか判別できなかった。「どのメーカーの牛乳を顧客が見ているのかというように、棚に並んだブランドも区別できる」(木下CEO)。

 UWBを使うと位置検知の精度が上がるのは、2nsという極めて短いパルス波を使って通信するからである。UWBタグを付けた物や人の位置を調べるため、基地局は10~20m間隔で、4~5台以上設置する。タグが発するパルスが各基地局に到着する時間のズレを調べて、位置を測定する。UWBではこのズレを正確に測定できる。無線LANのように連続波として出される電波の位相のズレを測るよりも、2nsという短いパルスの到着時間で調べるほうが精度が上がるのだ。

 今回の製品は、実はすぐには実用化できない。電波法令により、UWBは、ワイヤレスUSBのような用途にしか、まだ開放されていないからである。今回のような用途向けは、08年中にも開放される見込みである。それまでは、総務省に申請して実験局の免許を取る必要がある。09年以降の実用化を目指すユーザーやベンダーが実証実験を行うためのツールという位置付けである。

 実験用途ということで、今回の製品はタグのサイズも、45×80×21mmと大きい(写真1)。ただし日立は「1cm角のタグも開発済み」(木下氏、写真2)。UWBは消費電力を抑えられるのが特徴で、そのサイズでも5分に1回電波を飛ばす場合で、数年の電池寿命があるという。今回の製品の場合は容量が大きい充電電池を積んでおり、5分間隔で10年以上の電池寿命がある。

 価格は、4個のタグと4個の基地局にソフトウエアを付けて300万円。タグと基地局のハードウエアは同じ。ソフトウエアを入れ替えて、タグを基地局に変えたり、その逆も可能である。温度センサーを搭載するほか、その他のセンサーを搭載するためのインタフェースも備える。タグ・基地局間の通信速度は250kビット/秒。今回の製品は、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の仕様に基づき開発した。