日本音楽著作権協会 常務理事の菅原瑞夫氏
日本音楽著作権協会 常務理事の菅原瑞夫氏
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 「著作権の管理が、性善説に立脚してできるならば、そうした環境を望みたい。しかし現実には、いろいろな場で著作権の侵害が起こっている。技術がコンテンツ保護より先に行きすぎている現状では、性善説に立った著作権保護の法制度は難しいのではないか――」。日本音楽著作権協会(JASRAC) 常務理事の菅原瑞夫氏は、著作権の法制度のあり方についてこう語る。2007年12月17日に開催された「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」の記者会見の場での一コマだ。

 この日の会見は、文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会で議論されている、私的録音録画補償金の見直しがテーマ。同補償金を巡っては、権利者側とメーカー側、ユーザー側の意見が鋭く対立している。対立の根本的な原因の一つには、補償金の支払い義務やDRMによるコピー制限など、性悪説をベースとした法制度に対するユーザー側の不信感がある。菅原氏は、ユーザー側のこうした不信感について一定の理解を示しながらも、現状では性善説ベースでの制度維持が困難との見方を示した。

 菅原氏によると、現時点で深刻な問題とされている著作権侵害は、P2P技術を用いたファイル交換ソフト、動画投稿サイト、携帯電話向けの違法着うたサイトの3つ。「このうち違法着うたサイトは、利用する人の多くが青少年。彼らは、コンテンツが合法か違法かを判断できるようになる前に、違法コンテンツをダウンロードしてしまっているのが現状だ。こうした状況がある中で、権利者だけが性善説であり続けるのは難しい」と指摘する。「個々のユーザーが著作権に対する認識を持っている環境であれば、性善説ベースでの法整備もできる可能性がある。しかし現状では、ガチガチでないにせよ一定のルールは必要だと考えている」として、現行の私的録音録画補償金制度を維持するという権利者側の考えに理解を求めた。