日本科学技術連盟のSQiPソフトウェア品質委員会で委員長を務める、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の飯塚悦功教授
日本科学技術連盟のSQiPソフトウェア品質委員会で委員長を務める、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の飯塚悦功教授
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 「認定資格制度を作って、体系的なソフトウエア品質の知識を広め、品質担当者の認知度と地位向上を図る。ひいては日本のソフト産業の競争力を強化するための一歩としたい」――。日本科学技術連盟(以下、日科技連)のSQiPソフトウェア品質委員会で委員長を務める、東京大学大学院の飯塚悦功教授(写真)は12月10日、2008年に品質担当者やテスト専任技術者向けの資格試験を開始すると発表した。

 制度の詳細はこれから検討するが、飯塚委員長は構想の一端を「資格は3つのレベルで構成する」と明かす。「最下層のエントリ・レベルは多項目の選択式試験にして、少なくとも2008年中には開催する」(同)。試験が一般化した後、ゆくゆくは経済産業省が実施する情報処理技術者試験制度への組み込みもにらむ。

 経済産業省は08年秋季から情報処理技術者試験の刷新を進めるが、品質担当者向けの試験はない。さらにITSS(ITスキル標準)やUISS(情報システムユーザースキル標準)、ETSS(組込みスキル標準)といった各種スキル標準、情報処理技術者試験で対象とするIT職種とスキルを規定する「共通スキル・フレームワーク」にも品質担当者が明確に定義されていないのが実情だ。「OSもミドルウエアも海外ベンダーに押さえられている。このような状況で、品質は間違いなく日本のソフト産業の競争力向上の1つの鍵だ」と、日科技連理事長の浜中順一IHI顧問は話す。

 資格試験の基となるのは、日科技連が11月29日に書籍で公開した、ソフト品質の知識体系ガイド「SQuBOK(スクボック):Guide to the Software Quality Body of Knowledge」だ。ソフトウエア・エンジニアリングの知識体系であるSWEBOKをベースにして、「日本の各ベンダーがこれまで自社に閉ざしていた品質やテストに関するナレッジ、ノウハウをかなり盛り込んだ。日本発の知識体系であり、これまでにこうした取り組みはなかった」(飯塚委員長)。日科技連は約2年半をかけて、ベンダーが持ち寄ったテストに関するナレッジや技法を約200項目に整理。これを5層からなる体系にまとめた。

 「SQuBOKはどちらかといえば即効性のあるものではなく、日本の技術者の品質に対する精神を伝えるもの」と飯塚委員長は話す。「日本人は品質について、軽薄なところでは手を打たないし、他人のために品質を向上しようとする意識も高い」(同)。日本でオフショア開発が進む現状を受け、日科技連は英語と中国語にも翻訳するという。中国をはじめとするアジアでのSQuBOK普及も視野に入れて活動していく。