[画像のクリックで拡大表示]

 「多くの関係者が理解不足のなか、誤った理解に基づいて多くの企業が内部統制の構築に取り組んでいる」。日本内部統制研究学会は12月8日、創立総会を開催(写真)。その所信表明で、会長に就任した静岡県立大学の川北博客員教授はこう指摘した。同学会は、内部統制を研究する学者や公認会計士、弁護士、実務家などで構成。「『産・学・士(産業界・大学・会計士/弁護士)』が集まり、日本ならではの内部統制について議論するために設立した」と川北会長は説明する。

 同学会は、実際に内部統制の整備・運用に取り組んでいる企業に内部統制にかかわる情報発信を進める計画だ。「企業の経営や、法令との観点についての研究を深めていく。このほか、内部統制にかかわる日本監査研究学会や日本内部監査協会と連携して、日本企業のための内部統制を横断的に考えていきたい」(川北会長)という。

 日本内部統制研究学会の発起人の1人であり、金融庁企業会計審議会内部統制部会の部会長を務める八田進二 青山学院大学大学院教授は、創立総会のなかで「日本で内部統制の議論が混乱している理由は2つある」とした。1つは日本が「形式重視になっている点」(同)である。「内部統制は、健全な企業経営のための考え方。文書さえそろえれば良い、という考え方は本来の考え方とは異なっている」(同)。

 もう1つは、「日本では内部統制の議論の歴史が浅い点」(八田教授)だ。「日本で行われている内部統制の議論は、米国の孫引きになっている。米国では30年以上の内部統制の議論の末、米SOX(サーベインズ・オクスリー)法404条が適用された。やり方に問題があり混乱が起きたものの、財務報告の適正性を確保するたに内部統制を整備・運用するという体制は間違っていなかったと法律の立案者も考えている」(同)という。

 日本内部統制研究学会は今後、08年1月21日に「内部統制と企業不正」をテーマにしたシンポジウムを開催する予定だ。