写真●ソフトブレーンの創業者でマネージメント・アドバイザーの宋文洲氏(右)と三井物産戦略研究所中国経済センター所長の沈才彬氏(左)
写真●ソフトブレーンの創業者でマネージメント・アドバイザーの宋文洲氏(右)と三井物産戦略研究所中国経済センター所長の沈才彬氏(左)
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 「日本企業と日本社会が今後も成長し続けるには,海外市場への進出が不可欠。望むと望まざるとにかかわらず,世界最大の潜在市場である中国の存在は,日本にとってますます大きくなる」。東京ビッグサイトで開催している「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2007」で,ソフトブレーンの創業者でマネージメント・アドバイザーの宋文洲氏,三井物産戦略研究所中国経済センター所長の沈才彬氏が対談した(写真)。 

 「外から見た中国,中から見た中国~今日本人が学ぶべき中国ビジネスとは」と題したこの対談で,沈氏は「中国経済について“いつバブルが崩壊するのか”と危惧する声がある。個人的な意見だが,2008年の北京オリンピック,2010年の上海万博まで経済成長率が10%以上を下回ることはないと見ている」と分析。その上で「問題は万博後。過熱した経済をいかに“軟着陸”させるか,難しい舵取りが必要になる」と付け加えた。一方の宋氏は「マスメディアの報道や経済指標を見ると,急成長ばかりがクローズアップされている。だが一人の生活者の視点では,地域格差が大きく,市民に“豊かになった”との実感が薄い」と指摘。「中国の株式市場や不動産市場の過熱ぶりには危機感を覚える。北京オリンピック前後から軟着陸に向かっていくのでは」との見方を示した。

 とはいえ,長らく日本が担ってきた「世界の工場」としての役割が,中国に移りつつあることも否めない。こうした中,日中間のビジネス関係は今後どうなるのか。宋氏は日本企業について「国内市場を相手に“高コスト・高品質”を貫くだけでは限界がある」と指摘する。この点は沈氏の見方も同様だ。自動車をはじめ国内市場の頭打ち傾向が顕著になっていることや,日本から中国への輸出が急速に伸びていることから,中国市場に目を向けることの重要さを説く。さらに日本の少子高齢化もあって,労働力の面でも日中の交流が不可欠とした。

 さらに両氏は,企業における組織のあり方の違いについても言及した。沈氏は「日本企業はボトムアップ型の意思決定プロセスを好み,いったん決めたら必ず遂行する。ただ最終決定までのプロセスが多く,時間がかかる」と指摘。宋氏は20年以上に渡り日本でのビジネスを手がけてきた経験から「新しい市場でシェアをとるには,100人の平凡な社員よりも1人の優秀な社員が必要。社員の功績に対する評価があいまいで格差が小さい日本企業のやり方だけでは不十分」と語った。

 最後に両氏は,日中のビジネス関係が「もはや,どんなに手を切ろうとしても切り離せない密接な間柄に踏み込んでいる」と締めくくった。