スカイフィッシュは2007年11月30日、文書ファイルの読み上げソフト「JukeDoX(ジュークドックス)」を発売する。さまざまな形式のファイルの内容を音声で再生できる、いわば「文書のオーディオプレーヤー」だ。特徴的なのは、マイクロソフトの「2007 Office system」が採用したファイル形式「Open XML」を活用していること。Open XMLなら文書の各構成要素に自由にアクセスできるため、例えばWordなら見出し単位ごと、Excelならシートやセル単位ごとに読み上げや録音ができる。文書の任意の部分を自由に音声ファイル化し、携帯音楽プレーヤーで持ち運ぶ、といったことが可能になる。
JukeDoXは、オーディオプレーヤーをイメージさせる画面デザインを採用する。左下の「プレイリスト」領域に任意のフォルダーをドラッグ・アンド・ドロップすると、中に入っているファイルが一覧表示される。好みのファイルを選んで再生ボタンを押せば、その中身を読み上げる。扱えるファイルは、テキスト、HTML、Word(97~2003)、Excel(97~2003)、PowerPoint(97~2003)、PDF、一太郎、ロータス1-2-3、emlなどだ。
Word 2007、Excel 2007、PowerPoint 2007のファイルなら、さらにきめ細かな操作ができる。Open XMLで文書が保存されており文書構造がオープンなため、任意の部分の文字を取り出せる。例えばWordファイルなら自動的に見出しの一覧を抽出し、読みたい部分だけを選んで読み上げることが可能だ。「文書構造が公開されていない2003以前のOffice文書やPDF、一太郎などは、文字情報を抽出するだけで精一杯」(代表取締役を務める大塚雅永氏)だったため、このような自由な処理は難しかった。
気になるのは、その用途。同社が提案するのは、会議の資料や小説などを章ごとに音声ファイルとして保存して携帯音楽プレーヤーで持ち運ぶ、製品情報が記載されたExcelのセルを読み込んで「音声による製品カタログ」を作る、といった活用法。加えて、読み上げ以外の機能もアピールする。例えば、文書内の文字情報をテキストとして表示する機能。「対応アプリを起動しなくても中身が確認できるため、生産性が向上する」(大塚氏)。
同社は、2年前に起業したベンチャー企業。主に、音声を使ったアクセシビリティ向上のためのソフトウエア開発を手がけてきた。ここで蓄積してきた技術を基に開発したのが、JukeDoXだ。大塚氏は、「アクセシビリティで培った成果を、生産性や使い勝手といったユーザビリティにも広げたい」と話す。
マイクロソフトも、JukeDoXには大きな期待を寄せる。これまでどちらかといえば企業情報システムでの利便性がアピールされてきたOpen XMLに、新たな応用の可能性を提案するソフトだからだ。「文書の“章”を音声ファイルの単位として利用する。考えてみれば当然のことかもしれないが、Open XMLがなければ難しかった」(マイクロソフトの加治佐俊一CTO)。
JukeDoXの価格は、パッケージ版が1万8900円。法人向けのライセンスも、2008年春に発売予定だ(価格は未定)。