写真●光ファイバの1分岐貸しに反論するNTT東日本の渡邊大樹・取締役経営企画部長(左),経営企画部の大平弘・営業企画部門長(中),相互接続推進部接続システム部門の田村彰敏・部門長(右)
写真●光ファイバの1分岐貸しに反論するNTT東日本の渡邊大樹・取締役経営企画部長(左),経営企画部の大平弘・営業企画部門長(中),相互接続推進部接続システム部門の田村彰敏・部門長(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 NTT東日本は11月29日,総務省の接続委員会で議論されている光ファイバの1分岐単位の貸し出しに関する説明会を開き,「全く受け入れられない」(渡邊大樹・取締役経営企画部長,写真)とする考えを改めて強調した。

 1分岐貸しを受け入れられない理由は,(1)現在のOLT(光信号伝送装置)や分岐数は将来変わる可能性がある,(2)新サービスの柔軟な提供に支障が生じる,(3)NGNの特徴である帯域確保サービスの実現が困難になる,(4)故障対応のサービス・レベルが低下する--など多岐にわたる。

 (1)のOLTや分岐数の変更は,速度の向上や新サービスの提供で過去6年間に4回実施している。OLTを他社と共用していると,こうした速度の向上や新サービスの提供でOLT装置などを変更することが困難になると主張した。

 (2)の新サービス提供時の問題は,新サービスの提供による他社ユーザーへの影響や設備投資負担などをその都度,OLTを共用する事業者間で調整しなければならず,サービスの迅速な展開が難しくなる点を問題視。「サービスに対するポリシーも品質重視や価格重視などで事業者ごとに異なるので,そもそも共通の運用ルールを作るのは難しい。新サービスを提供する際も調整が不調になる可能性が高い」(渡邊取締役)。

 (3)の帯域確保については,NGNの帯域制御サーバーで他社のユーザーが利用している帯域を管理できなくなるとした。このため,NGNの目玉となっている帯域確保サービスを提供できなくなるという。

 また,(4)のサービス・レベルの問題は,故障発生時の原因特定に時間がかかり,復旧までの時間が長期化することを懸念した。アクセス経路にトラブルが発生した場合は,OLTを共有する全社に連絡し,連携しながら対応しなければならないからである。

 こうした点に加え,渡邊取締役は,現状でもダーク・ファイバを使って事業者振り分けスイッチを自前で設置すれば希望する事業者間で設備の共有は可能であることを強調した。ソフトバンクモバイルが第3世代携帯電話基地局を短期間で大量に増設したことを引き合いに出し,「こうした経営資源を光ファイバの敷設に振り向ければ当社と同様なサービス提供が十分可能」とした。

 さらに「共用を希望している事業者は約900万人のブロードバンド・ユーザーを抱えており,携帯電話のユーザーを含めると5000万人くらいになる。これだけの顧客基盤があり,資金力も十分となれば,現状でも我々と同じことをできるはず」(同)と続ける。「電力系事業者をはじめ,小規模なCATV事業者でも光ファイバを自ら敷設して設備で競争しているにもかかわらず,(ソフトバンクやKDDIなどの)大手事業者はどうしてできないのか」(同)と訴えた。

 同社がこのような会見を開くのは異例。光ファイバの1分岐貸しはそれだけ同社にとって「非常に大きな問題」(渡邊取締役)ということだ。「他社は光ファイバを安く調達できれば携帯電話など上位レイヤーで勝負できるかもしれないが,我々にとっては最大のサービスであり,唯一の差別化材料である。設備事業者の生命線であり,一切妥協できない」(同)と,光ファイバの1分岐貸しには徹底抗戦する構えを見せた。