メディアフロージャパン企画 代表取締役社長の増田和彦氏。手にしているのは、開発中のMediaFLO受信専用端末
メディアフロージャパン企画 代表取締役社長の増田和彦氏。手にしているのは、開発中のMediaFLO受信専用端末
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実験局から発射されたMediaFLOの電波を携帯電話で受信し表示しているところ。使用している端末は、韓国LG電子が米国で市販しているMediaFLOチューナー内蔵携帯電話
実験局から発射されたMediaFLOの電波を携帯電話で受信し表示しているところ。使用している端末は、韓国LG電子が米国で市販しているMediaFLOチューナー内蔵携帯電話
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KDDI施設内にアンテナを設置し、UHF帯でMediaFLOの電波を発射している。出力は1.4mWである
KDDI施設内にアンテナを設置し、UHF帯でMediaFLOの電波を発射している。出力は1.4mWである
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 KDDIと米クアルコムの共同出資会社であるメディアフロージャパン企画は2007年11月27日、クアルコムが開発した携帯機器向け放送技術である「MediaFLO」の屋内における実証実験を実施すると発表した。

 MediaFLOは、携帯電話をはじめとする携帯機器に向け、映像や音声、データなどのコンテンツを一斉同報で伝送する技術。2007年3月に米ベライゾンワイヤレスが商用サービスを始めており、現在までに約50都市で視聴可能になっているという。携帯電話でテレビを視聴可能にする技術という点では、ワンセグや、欧州で実用化が進む携帯機器向け地上デジタル放送「DVB-H」と競合する。

 これまで国内では、電波暗室内での実験のみ実施していたが、今回は総務省から実験局認可を得て屋内での実験を実施する。東京都内のKDDI施設「KDDIデザイニングスタジオ」内にアンテナと端末を設置し、UHF帯の電波を発射。NHKエンタープライズやスター・チャンネルなど11社から映像の提供を受け、動画や文字データを複数の端末へ一斉同報で送信する。今回の実証実験では米国向けの送信設備や受信端末を利用する。端末は韓国LG電子、京セラ、韓国サムスン電子、シャープが提供する。今回の実証実験で用いる映像のフレーム数は24フレーム/秒、解像度は320×240ドット。「現時点では端末の演算性能が30フレーム/秒の処理に対応できないので、フレーム数を下げている。とはいえ24フレーム/秒でも、ワンセグより画質が良いことは実感できると考えている」(メディアフロージャパン企画 課長補佐の金山由美子氏)としている。

「蓄積型放送も、リアルタイムのデータ放送も可能」

 MediaFLOの特徴についてメディアフロージャパン企画 代表取締役社長の増田和彦氏は、「ワンセグが15フレーム/秒なのに対し、MediaFLOは最大30フレーム/秒と高精細。チャンネルの切り替えも1~1.5秒と素早く、チャンネルを頻繁に切り替えながら視聴するザッピングに適している。また、リアルタイムのストリーミング放送だけでなく、いったん端末にデータを蓄積して、ユーザーが好きな時間に視聴できる蓄積型テレビ放送や、リアルタイムの株価情報を常に端末に表示するようなデータ放送も実現できる」とする。

 日本では2011年の地上波アナログ放送の終了以降、空きとなるVHF帯、UHF帯の電波を新たな用途へ割り当てることを総務省などが検討している。メディアフロージャパン企画ではVHF帯の獲得を目指し、情報通信審議会などに働きかけを進めている。今回の実証実験も、総務省や国内の放送局などにMediaFLOの技術的な優位性をアピールし、帯域確保を図る狙いがあるとみられる。なお、今回の実証実験はVHF帯ではなくUHF帯だが、これは「先行して実用化している米国がUHF帯を採用しており、現在手に入る機器がUHF帯のものだけであるため」(増田氏)とする。

 コンテンツに関しては、「映像/音声とデータ、ストリーミング放送と蓄積型放送を包括的に展開できるMediaFLOの特徴を生かし、新たな事業モデルを放送局に提供できると考えている。例えば、一般の放送と同じコンテンツを蓄積型放送でも提供すれば、一般放送で見逃した番組を後で見直せるといった、タイムシフト型の視聴サービスが考えられる」(増田氏)とする。また、KDDI(au)は現在、携帯電話網でコンテンツを一斉同報する技術であるBCMCSを用いて、音楽番組を配信するサービス「EZチャンネルプラス」を展開しているが、これをMediaFLOに移行し、コンテンツを長時間化・高品質化するといった用途も検討している。

 今回の実証実験の様子は一般ユーザーにも公開するとしており、コンテンツの種類や視聴スタイルなどについてユーザーの意見を集めていくとしている。「日本では既にワンセグが普及しているので、その前提でユーザーが視聴したいと考えるコンテンツ、そのコンテンツに対して支払っていただける料金水準などを検討していく」(増田氏)としている。