Appleのスマートフォン「iPhone」を買おうと英国,フランス,ドイツで販売店の周囲をぐるりと取り囲む列に並んだファンを目の当たりにすると,iPhoneが初登場した米国に続いて素早いスタートを切ると思えるだろう。ところが,Appleは欧州の厳しい消費者保護規制に妨げられ,米国で実施した特定の携帯電話キャリアにiPhoneを独占させる戦略の見直しを迫られている。

 ドイツの裁判所は11月第4週,同国におけるiPhoneの独占的販売権を持つドイツT-Mobile Internationalに対して,2年契約をバンドルしないiPhoneの販売を命じた。この決定により,ドイツの消費者は購入したiPhoneをT-Mobile以外のキャリアで使える自由を得た(関連記事:T-Mobile,携帯電話の2年契約が不要な「iPhone」を999ユーロで販売)。こうした使用方法が認められているのは,現在のところドイツだけだ。米国の場合,米AT&Tのひどい携帯電話ネットワークがiPhone足かせとなっており,評判が芳しくない。

 ドイツで下された決定は,英Vodafone Groupが法的請求を行った結果である。Vodafoneは欧州全域でiPhone契約を結びたい考えだが,欧州連合(EU)内で初めてiPhoneが販売される3カ国すべての契約を逃した。ただし,Vodafoneは「この種の禁止命令を求める訴えはドイツ以外のEU加盟国で起こさない」としている。

 そもそもVodafoneは,訴える必要がないのかもしれない。フランスでは,国内法違反に相当するとして,携帯電話キャリアであるフランスOrangeとAppleとのiPhone独占契約が調査の対象になっており,Appleはフランスの別のキャリアにもiPhone販売を許可するよう命じられた。Orangeはこの命令を部分的に順守するため,ほかのキャリアでも利用可能な“アンロック”版iPhoneを販売する。しかし,Orangeはフランスで11月最終週にiPhoneを発売する予定なのに,価格と詳細な契約プランを発表していない。恐らくアンロック版の価格はロック版より高くなるだろう。

 Appleは,どうやってほかのEU諸国で同様のiPhone独占キャリア戦略を展開していくのだろう。Appleが欧州内のiPhone販売計画を明らかにしたのはまだ3カ国だけで,EUの厳しい消費者保護規制に阻まれて独占契約を結べるかどうかもはっきりしない。