独立行政法人の情報処理推進機構(IPA) はソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)の設立3周年を迎え、これまでの活動について発表した。SECは、企業情報システムに相当するエンタープライズ系ソフトウエアと組み込みソフトウエアの開発力強化に向けた議論・研究を進めてきた。

 主な成果物はエンタープライズ系で2つ、組み込み系で4つある。エンタープライズ系については、プロジェクト診断ツールとプロジェクト可視化ツール「EPM(エンタープライズ・プロジェクト・モニター)ツール」である。プロジェクト診断ツールを使えば、自分のプロジェクトが置かれている相対的な状況やレベルを把握できる。1774件の開発事例データに基づいて作ったもので、来年1月に公開する。診断ツールの基礎となる事例データについてSECの鶴保征城所長は「データの質量ともにまずまずだ」と自信を見せる。

 EPMツールは今年4月に試行版をリリース済みで、東京証券取引所やトヨタ自動車、シャープ、デンソーなど32のプロジェクトで利用されている。

 組み込み系については、人材育成の指針となる「組込みスキル標準(ETSS)」、コーディング作法を明文化したリファレンス「ESCR」、開発プロセスのガイドライン「ESPR」、プロジェクトマネジメントの方法論をまとめた「ESMR」がある。

 今後は新たな成果物を作ることだけでなく、完成した成果物の普及に力を注いでいく。「ベンダーはSECの成果物について評価をしてくれても、実際に全社標準として活用するまでには至らないケースが多い」と鶴保所長は嘆く。

 こうした状況を打破できるのかどうか。この点について鶴保所長は、「SECの成果物に関心を抱くユーザー企業が増えてきている。こうした流れからベンダーでの活用が進んでいくはずだ」と期待する。さらに鶴保所長は「我々の成果物を使えば、システム開発のトラブルが減り、ベンダーの利益の向上につながる。多忙な現場にもゆとりが生まれ、人材教育への時間も確保できるはずだ」とアピールする。

 SECの成果物を利用した実証実験は既に95件ある。設立3周年を機に、その中から高い効果を生み出した8つの企業・団体に対して、「ソフトウェアエンジニアリングベストプラクティス賞」を授与。授賞式は11月28日に行う。