写真1 キーボードに求められる条件について説明を行う堀内光雄氏
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写真2 キーボードを押すときに指にかかる力。一定の力ではなく微妙に力加減が変化していることがわかる
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写真3 キーボードのフィーリングを支える肝となる「ラバードーム」
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写真4 ThinkPadで採用しているキーキャップ。かなり複雑な形状をしているのが分かる
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写真5 キーキャップの手前側は入力ミスをしにくいようになだらかなスロープ形状となっている
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写真6 キーボードを真上から見たところ。四隅が丸まっているのが分かる
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写真7 「ESC」キーと「F1」キーとの間はほかのキーよりも間隔が広い。また仕切りも高くなり、入力間違いしにくいよう設計されている
写真7 「ESC」キーと「F1」キーとの間はほかのキーよりも間隔が広い。また仕切りも高くなり、入力間違いしにくいよう設計されている
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 レノボ・ジャパンは2007年11月13日、キーボードに関するテクノロジーブリーフィングを開催し、ThinkPadに採用しているキーボードの技術やこだわりについて解説した。解説したのは、レノボ・ジャパンのノートブック開発研究所で副部長を務める堀内光雄氏。ThinkPadの特徴として、そのキータッチを評価するユーザーは多い。堀内氏は日本IBM時代からキーボードの開発に関わっている。ThinkPad 600以降のほぼすべてのキーボードを手がけており、ThinkPadのキーボードのキーパーソンともいえる存在だ。

 キーボードはキーを入力する機構の違いから「メカニカル方式」と「メンブレン方式」の2つに大別される。メカニカル方式は、キー一つひとつが独立した機械的なスイッチになっている方式。比較的高価なため、採用するパソコンは少ない。メンブレン方式は、キーの下に膜状のゴムなどのシートを置いた方式。メカニカル方式に比べ安価で軽量になることから、ノートパソコンを含む多くのパソコンで使われている。

 ThinkPadもメンブレン方式を採用しているが、「そのこだわりが他社とは異なる」と堀内氏は説明する。同氏がキーボードに求める条件は3つ(写真1)。「速く打てること、タイプミスが少ないこと、そして長時間使用しても疲れないこと」である。その実現のために重要となるのは「キーのフィーリング、キーキャップの形状、キーのレイアウト」だという。

 キーのフィーリングとは、キーを押したときに指が感じる圧力のこと。よいフィーリングとは、押している最中に感じる、ほどよいクリック感と、下まで押し下げたときのソフトな着地感だという。ThinkPadではキーの押し始め位置(「スタートポイント」)から、途中までフィーリングはほとんど変化せず一定の値をとる。そして、「ピークフォース」と呼ぶ深さまで達すると、そこからさらに下の「ボトムフォース」と呼ぶ深さまでは、フィーリングが軽くなる。ボトムフォースから押し切った状態(「エンドポイント」)までは、だんだんフィーリングが重くなるように設計されている(写真2)。

 このフィーリングを実現しているのが、「ラバードーム」と呼ぶ部品だ(写真3)。ラバードームはキーとシートの間に置かれ、クッションのような役目を果たす。凸型の形状をしており、「スタートポイント」から「ピークフォース」までは上の部分がつぶれる。そして「ピークフォース」から「ボトムフォース」を経て「エンドポイント」までは下の部分がつぶれることで、上記のようなフィーリングを実現している。ThinkPadではこうしたフィーリングは機種ごとに異なっており、機種に合わせて最良のフィーリングになるよう調整しているという。

 実際に指が触れる部品となる「キーキャップ」では、真ん中を中心としたすり鉢形状になっていることが、使いやすくするために重要だという(写真4)。キートップが広くて平らだと打ちやすいと思えるが、平らな部分が広すぎると指が動いてしまいミスタッチが増えてしまうというのだ。そのため、ThinkPadでは、すり鉢状にすることで指のずれを抑えるようにしている。そして、キーキャップの辺に当たる「スロープ」では手前の部分が広くなるように設計している(写真5)。これは手前のキーを叩いてしまうというミスを減らすためだという。