「マイクロソフトのWindows Genuine Advantage(WGA、正規Windows推奨プログラム)はプライバシーの侵害」、そう主張してマイクロソフトを訴えている北京大学の学生がいる。中国のメディア報道によれば、この学生は北京大学大学院で法律を専攻する陸峰氏。同氏は、WGAがプライバシーの侵害にあたるとして、マイクロソフトに対して、このプログラムにより得た情報の公開と謝罪を行うよう、裁判所である北京市一中院に2007年8月28日に提訴した。しかし、裁判資金が尽きて、援助を募集しているとのことだ。

 陸峰氏は、4月ごろに中国のBBS上に「海賊版利用者は気をつけろ。マイクロソフトはWGAにより海賊版利用者のデータを集めるつもりだ。WGAは消費者のセキュリティを脅かすことになる」といった書き込みを見て、訴訟することを決意。同氏は「訴訟することでユーザーに利益を与えたい。勝つために持久戦も覚悟している」と中国メディアに語っている。なお、自身が海賊版ユーザーなのでは、と疑われることを気にしてか「私が使っているWindowsは正規版で、WGAのチェックも通っている」とも付け加えている。

 11月8日には、人民大学で陸峰氏が中心となりこの問題について討論会も行われた。討論会に集まった法律の専門家は、「マイクロソフトはユーザーに対して、WGAについての告知義務を怠っている」という攻め方を主張する意見と、「マイクロソフトがプライバシーを侵害している証拠を集めよう」という意見に分かれた。また、IT専門家からは「単にPC情報やIP情報を集めているだけだろうが、もし戦争が起きれば中国のあらゆるPCは攻撃にさらされるかもしれない」との意見も出たという。

 陸峰氏は、資金がなくなったことに併せて、プライバシー侵害の証拠も集まっていないことも明らかにした。同氏は中国メディアに対して、「中国と米国の両国でマイクロソフトに対して同時に訴訟を起こそうと考えていたが、米国での訴訟や翻訳のための費用が足りない。そこで援助を募集して、そのお金でマイクロソフトと戦いたい」と訴えた。

 しかし、BBSの書き込みを見て裁判を始めたことや、証拠も集まっていないことなどから見ると、陸峰氏が確たる証拠もなく裁判を始めたことは明らか。資金も続かなくなっていることから、訴訟の継続も難しいだろう。どうも売名行為的な“お騒がせ裁判”で終わりそうだ。