ソフトバンクモバイルは11月12日,ウォルト・ディズニー・ジャパンと協業し,日本国内でディズニーによる携帯電話サービスを開始すると発表した。サービス名は「ディズニー・モバイル」で2008年春に開始する。ディズニー・モバイルでは,独自の端末やコンテンツ・サービスを用意。「今までのコンテンツ・サービスよりも踏み込んだ価値をユーザーに提供する」(ウォルト・ディズニー・ジャパン)。

 具体的には,ディズニーがソフトバンクの携帯電話網を借り受け,そのネットワークを利用して携帯電話サービスを提供する。ここまでは従来のMVNO(仮想移動体通信事業者)と同様だが,ソフトバンクとディズニーは「今回の協業は従来のMVNOとは違う」と強調する。従来と異なるのは,端末やサービス,コンテンツの開発やマーケティング,販売を両社が協力する点である。

 従来のMVNOの形態では,携帯電話網を保有する事業者はネットワークを貸し出すだけで,端末の開発や販売などはMVNO任せであった。これに対し,今回の協業では,販売網としてソフトバンクショップを活用することなどが既に検討されている。ソフトバンクモバイルは「端末,料金体系,コンテンツなどはディズニーが主導して決めていく。ディズニーから要請があれば,我々はそれに協力していく」と協業のスタンスを説明している。

 今回のような協業体制にしたのは,米国でのMVNOサービスの失敗が影響したようだ。米ウォルト・ディズニーは米国において,2006年6月に米スプリント・ネクステルから携帯電話網を借りてMVNOサービスを開始した(関連記事)。しかし,開始から1年後の2007年9月に撤退を発表(関連記事関連リリース)。2007年内にはサービスを終了する。日本でのサービスは米国での反省を踏まえ,携帯電話事業者と協業する形にした。ウォルト・ディズニー・ジャパンは「従来のMVNOと違い,携帯電話事業ですでに成功している企業と協業したのが強みだ」という。

 米国では高付加価値コンテンツを売りにしたMVNOの成功例は少ない。ウォルト・ディズニーが運営していたスポーツ・コンテンツに特化したMVNOサービス「モバイルESPN」は2006年末にサービスを終了。若者向けコンテンツを集めた米アンプド・モバイルは2007年6月に経営破たんしている。失敗の原因は,ユーザーの獲得に苦戦したり,若年層のユーザーが通信料を滞納しがちだったりしたこととされている。日本でのディズニー・モバイルの成功は,ソフトバンクとの協業でこれらの問題をクリアできるかどうかにかかっている。