日本通信は12月中旬から、NTTドコモの携帯電話を企業のメール・サーバーやWebサーバーに直接接続できるサービス「ケータイPC化サービス」を開始する。ドコモのFOMA網などからiモード・サーバーを経由せずに企業のサーバー群に接続するため、携帯電話を自社メール・サーバーのメール・クライアントとして利用したり、インターネットを介さずに携帯電話のWebブラウザでイントラネットのアプリケーションを利用したりできる。料金は、携帯電話1台(1ID)当たり月額1680円。このほか、日本通信と企業を結ぶ回線の通信料などが必要だ。

 ドコモの携帯電話でメールやネット接続をする場合、通常は同社が用意するiモード・サーバーを経由しなければならない。メールであれば、ドコモのメール・サーバーに接続する形しかない。もちろん、携帯電話に転送したり、Webメールを利用したりすれば会社に来たメールを読むことができる。しかし前者では、そのメールに返信すると発信ドメインはdocomo.ne.jpになってしまう。後者では、ユーザーが定期的にWebメールを確認しなければならない。両者を組み合わせれば“プッシュ型”でメールを読み、自社ドメインからメールを発信することは可能だが、使い勝手はよくない。

 その点「ケータイPC化サービス」を利用すれば、会社に来たメールがそのまま携帯電話に届き、そのメールへの返信は自社メール・サーバーからの発信となる。仕組みは、こうだ。同サービスを利用する携帯電話のメールやネット接続の通信は、ドコモの携帯電話網の交換機でiモード・サーバーではなく、日本通信のセンターにつなげられる。そのセンターと企業のデータセンターなどは専用線で結んでおき、企業サーバーへ直接通信させるわけだ。

 企業のデータセンターなどには、日本通信が開発したゲートウエイ(GW)・サーバーを置く。メールは、GWサーバーが定期的にPOPなどのプロトコルで会社のメール・サーバーにアクセスし、メールが来ていれば携帯電話に送る。その際、iモード・サーバーは経由しない。一方、携帯電話から送ったメールはGWサーバーがSMTPなどで会社のメール・サーバーに転送し、そこから相手先に発信される。ドコモのメール・サーバーの代わりに自社のメール・サーバーを使うと考えればいい。既存のメール・サーバーに手を入れる必要もない。

 注意しなければならないのは、通信先を企業サーバーにしている間は、iモードに来たメールを受信したり、ドコモのメール・サーバーからメールを送ったりすることはできないということ。企業サーバーを利用する際にユーザーは、事前に携帯電話上で通信先をiモードから日本通信に変更する必要がある。

 ネット接続についても同様だ。携帯電話でネット接続をすると、GWサーバーが社内のイントラネット・サーバーにつないだり、社内のプロキシ・サーバー経由で社外のWebサーバーにアクセスしたりする。通信先を企業サーバーにしている間は、iモード・サーバー経由でネット接続することはできない。また、iアプリを開発し、会社の業務アプリケーションとの間でクライアント-サーバー型のシステムを構築することが可能だ。

 「ケータイPC化サービス」を利用できるのは、iモード対応のFOMA端末のみ。料金は1ID当たり1680円(税込み)。パケット通信料がドコモから請求されるほか、日本通信のセンターと企業とを結ぶ回線料金が必要だ。日本通信の接続ポイントが都内なので、「都内の企業なら月額5万~15万円。IP-VPNなどでWANを構築している企業であれば数万円」(福田尚久 常務取締役)だという。

 福田常務取締役は、「今回のサービス提供で、携帯電話のビジネス利用のシーンが広がる。ノートPCを情報漏洩対策で持ち出し禁止にした企業などのニーズにも応えられる」と意気込みを語る。

 サービス提供の日にちは決まっていないが、12月中旬になる見込み。さらに日本通信は、さまざまな展開を計画している。まず、携帯電話の端末認証は当面、日本通信のセンター内で行う。これを、企業側で行えるオプション・サービスを提供する計画だ。また、現在、メールの添付ファイルは100Kバイト程度までとしているが、来春にはこの制限を何らかの方法で変える。KDDIやソフトバンクモバイルにおける「ケータイPC化サービス」については、「すでに申し込んであり、現在協議中」(福田常務取締役)である。