壇上で語るバルマーCEO
壇上で語るバルマーCEO
[画像のクリックで拡大表示]
会場の参加者の質問に答える
会場の参加者の質問に答える
[画像のクリックで拡大表示]

 マイクロソフトは2007年11月9日、ソフトウエア開発者との意見交換を目的としたイベント「マイクロソフト デベロッパー フォーラム」を開催した。イベントの副題は、「Microsoft's 2020 vision of technology」。米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOが今後のソフトウエア開発の方向性を語ったほか、会場からの質問に自ら回答した。

 バルマー氏は、ネットワークを通じてソフトウエアやシステムを利用する、いわゆる“クラウド・コンピューティング(Cloud Computing)”に現在力を入れていることを繰り返し述べた。多くのシステムはネットワークの向こう側で動くことになり、「今後10年の間に、企業内のサーバーは減っていくだろう」(バルマー氏)と言う。そこで必要となるのが、「クラウドのためのOS」(同氏)。クラウド・コンピューティングの基盤となるプラットフォームを同社が整備していくとの姿勢を示した。前日発表した「Windows Live」も、その一つという位置付けだ。

 「我々は既に、クラウドOSのAPIを提供し始めている」(同氏)。例に挙げたのは「Outlook」だ。OutlookはWindows上で動作するメールソフトだが、ネットワーク経由でデータにアクセスできる「Outlook Web Access」や、Windows Mobile向けのソフトウエアも用意している。ユーザーが異なる端末からアクセスしても、ネットワーク上のサービスと結び付いて常に快適な環境を提供する。このようにクラウド・コンピューティングとデスクトップ上のアプリケーションが有機的に結び付く姿こそが、「ソフトウエア+サービス」が目指す姿だという。

 会場からは、クラウド・コンピューティングのように技術をブラックスボックス化する動きが進むと、ひとたび障害が起こったときに原因究明や復旧が困難になるのではないか、との質問が出された。これに対してバルマー氏は、クラウド・コンピューティングの基盤となる“新しいOS”が、そのためにも必要なのだと回答。「プラットフォームを作り、開発者のためのツールも用意する。これによって、拡張性や管理性、互換性を確保していく」(バルマー氏)。

 とはいえ開発者の中には、ブラックスボックス化された内部の構造を知りたい、という欲求もある。バルマー氏は、母校であるハーバード大学を訪れて博士課程の学生たちと懇談した際、彼らに「最も好きなOSはMS-DOSだ」と言われたエピソードを紹介。Windowsはブラックボックス化が進みすぎて内部を学べないが、MS-DOSならすべての構成部分がどう動いているかが分かるためだ、という。もちろんこのように既存システムの内部を詳しく調べることは重要だが、それだけでは駄目だとバルマー氏は言う。「ブラックスボックス化された部分を解析するためだけに頭脳を使うのでなく、次のフロンティアを開くためにも使ってほしい」と話した。