写真1●モデレータの日経デザイン編集長勝尾岳彦氏
写真1●モデレータの日経デザイン編集長勝尾岳彦氏

 NETMarketing Forum 2007 Fallの専門トラックA最終パネルは、「Webマーケティングに新境地を拓く--リッチメディア活用最前線」と題して、動画やインタラクティブな仕掛けなど、リッチメディアを活用した先進のネットマーケティング事例を検証した。モデレータは日経デザイン編集長の勝尾岳彦氏。パネリストは、KDDIマーケティング本部宣伝部長の村山直樹氏、サンスターメディア・プロモーション室長の中西裕紀氏、プロクター・アンド・ギャンブル・ノースイーストアジア(P&G)マーケティング本部アシスタントブランドマネージャーの堺直樹氏の3人。KDDIの「Eye Project」、P&Gの「Herbal Essence」、サンスター「TONIC AIRWAYS」のプロジェクトの成果と今後の課題を語ってもらった。

 まず勝尾氏は、「リッチメディアの活用が提唱されているが、具体的にどう活用して、リアルとどう連動させて効果をあげているか悩んでいる企業も多い」として、先進的な事例を持つ3社の具体的な手法と成果を聞いた。

 P&Gは2007年8月の「Herbal Essence」ブランドのリニューアルに際して、リッチメディアを活用したキャンペーンを展開した。その目的は、消費者に効果的な「Buzz(ネット上のざわめき)を起こすこと」(P&G堺氏)。しかし、発売前のキャンペーン期間は1カ月と短かかったため戦略が重要だったと語った。そこで、「ターゲットを18~23歳女性と徹底して絞り込み、レポート用紙20~30枚にも及ぶ具体的なプロファイルを検証して、コンタクトポイントを絞り込んで展開先を設定していった」(堺氏)。

 キャンペーンアイデアは「パラダイストリップ!」として、クチコミの核となるストーリーを設定。あえて製品の売り込みはしない方針を固めて、ターゲット層に人気の土屋アンナをフューチャーし、「土屋アンナ失踪?」というサプライズストーリーを作った。特設サイトでは、ワイドショー仕立てのムービーを配信。視聴者であるブロガーを「アンナ捜索隊」と位置付け、参加意識を促すブログパーツを配った。大手ポータルサイトなどでのオンライン広告やタイアップサイトからも誘導しながら、リアルでは号外や商品サンプル配布などを展開した。

 飽きやすい若い女性の関心をつなぎとめるためにネタを追加投入し、リニューアル製品を発表する8月1日がピークとなるようコントロールした。当日は失踪していたアンナが記者会見をするイベントを設定し、その日を境に「アンナ本人がプロデュースした製品」へと広告内容を切り換えた。

 結果について堺氏は、「月間ページビューは昨年度比較で18倍、ブログ書き込み件数はキャンペーンについて3500件、製品については1800 件」と予想以上の効果があったことを明らかにした。この成果を得られたのは「ブロガーだけではなく、大手ポータルからの導線が機能したことが大きい」と分析している。

 次に、サンスター中西氏が「TONIC AIRWAYS」のキャンペーンを紹介した。トニックシャンプーは1968年に発売された大ヒット商品だが、「市場変化や若年層への認知低下でブランドの間口が減少している」という課題がある。そこで、イメージを刷新するために、「フライトエンターテインメント」というテーマで複数のチャネルを組み合わせたキャンペーンを設計した。コンセプトはシャンプーの爽快感。ファーストクラスのフライトのような爽快な洗髪体験をしてもらいたいということで「TONIC AIRWAYS」と名付けて、代理店も含めてディテール作りにこだわった。

 リアルでは、大型のアドトラックを用意しその中にファーストクラスのシートを2席設置、フライトアテンダントがシャンプーする。中西氏は、「難点は一度に二人しか体験できないこと。今後は小型で機動力のある展開も考えていきたい」と笑いを誘ったが、アドトラックの1カ月の走行距離は8750kmにもなったという。

 特設サイトにも、細部にこだわったコンテンツを用意した。キャプテントニックを主人公とするバイラルムービーを仕込んだが、それより話題となったのが、キャビンアテンダントがシャンプーをしてくれるというシュールな映像体験。ムービーを最初に掲載したシーディングサイトから、そのほかのCGMサイトへ広がり、CGMサイトから特設サイトへのアクセスが予想外に多かったという。