インターネット上の3次元(3D)仮想世界は、「Second Life」だけに限らない。IT業界の巨人である米IBMでは5000人が独自の3D仮想世界の開発に関与しているし、日本のベンダーはWebブラウザーで利用できる3D仮想世界の開発を進めている。11月7日に東京で開催した「3Dインターネット・カンファレンス」のパネルディスカッションで、各社が自社の3D仮想世界技術を披露した。

 パネルディスカッションに参加したのは、日本IBM、スプリューム、3Diの3社。日本IBMサービス・イノベーション研究所新事業推進部部長の宮川精氏は「IBMはワールド・ワイドで3Dインターネット研究を進めており、社内イントラネットで、3Dインターネット『Active World(写真1)』を既に運用している。40万人いる社員の中で、5000人ぐらいがこの取り組みに関わっている」と語る。

写真1●IBMの3D仮想世界「Active World」
写真1●IBMの3D仮想世界「Active World」

3D仮想世界のアウトソーシングを狙うIBM

 Active Worldの特徴を宮川氏は、「クライアント・プログラムのサイズが5MB程度と軽量で、しかもシステムが非常に軽いこと。3D仮想世界で行動するアバターには影も生成されているが、ストレス無く動作している」と説明している。

 IBMが3D仮想世界に取り組むのは、そこに大きなトランザクションが発生すると見込んでいるからだ。「IBMは、巨大なトランザクションを預かる(ホストする)ビジネスを手がけており、アウトソース事業のチームも、3Dインターネットに関与している」(宮川氏)と言う。

splumeはIE上で3D仮想世界を実現

写真2●スプリュームのWebサイトには既に、Webブラウザーで閲覧できる3D仮想世界が実装されている
写真2●スプリュームのWebサイトには既に、Webブラウザーで閲覧できる3D仮想世界が実装されている

 日本製の3D仮想世界「splume」を運営するスプリューム社長の梶塚千春氏は「われわれは、独自のアプリケーションをダウンロードしなければ利用できないという現在の3D仮想世界のネックを解消しようと考えている」と語る。同社では「CRプラグイン」と呼ぶ、Internet Explorer用のActive Xコントロール(プラグイン)を開発。このプラグインを組み込むと、Webブラウザー内で3D仮想世界にログインできるようになる(写真2)。

 スプリュームの梶塚氏は、「Second Life」にはない「splume」独自の取り組みとして、「3D仮想世界の単位である『空間』が、Webと同じ仕組みになっていること」(梶塚社長)を挙げる。Second Lifeでユーザーが保有できる「島」は、データ自体はSecond Lifeを運営する米Linden Labのサーバーにホストされている。それに対してsplumeの「空間」は、ユーザーが自身のサーバーにホストできる。

 また、splumeでオブジェクトを作成するためのデータ形式は、3DCGを作成する上での業界標準のデータ形式を採用している。根塚社長は、「オブジェクトの作成が容易で、他の用途に作成した3Dデータをインポートできる。アニメ会社がアニメの世界をそのままsplumeに持ち込むというプロジェクトも進んでいる」と語っている。