写真●ロカリサーチの伊藤直也 代表取締役CMO
写真●ロカリサーチの伊藤直也 代表取締役CMO

 「20のサイトに広告ビデオを掲載したらクチコミで伝播し、600以上のサイトに掲載され、1カ月間で47万回、3カ月後には60万回視聴され、公式キャンペーン・サイトに26万アクセスを誘導した--。ロカリサーチの伊藤直也代表取締役CMOは、2005年にタイトーのパズルアクションゲーム「EXIT」に対して行われた「日本初のバイラル・キャンペーン」(同)であるバイラル・ビデオ「Go to Exit」の効果について、11月7日に東京ミッドタウンで開催された「NET Marketing Forum Fall 2007」でこう語った。

 バイラル・キャンペーンで利用するのは、ビデオだけでない。ゲーム、Webサイト、ブログパーツなどで消費者の関心を引く内容であれば、形式はなんでも良い。欧米ではすでに、大手広告主によってバイラル・キャンペーンが数多く展開されており、カンヌ国際広告賞でもバイラル・キャンペーンが高く評価されているという。

 日本ではあまり知られていないが、日産自動車が欧州で発売した「キャシュカイ(Qashqai)」のバイラル・キャンペーンでは、最初の1カ月間で350万回、3カ月間で1250万回視聴され、キャンペーン・サイトに170万人を誘導した。

 テレビCMにも従来のネット広告にもない、バイラル・キャンペーンならではの効果として伊藤氏は、「一言で言うとエンゲージメント。消費者関与度の高いブランド体験をもたらすこと」を挙げる。「消費者は企業主導型の広告を避けるようになった。バイラル・キャンペーンは同じ消費者からクチコミで伝搬するコンテンツだから、消費者は抵抗を覚えることなく、能動的に接触してくる」。

 バイラル・キャンペーンを行う企業が増えている大きな理由として挙げられるのが、「インターネット上のクチコミ・インフラがかつてないほど整備されている」(同)ことだ。特にYouTubeの存在は大きく、一般のブロガーが動画をブログに貼り付ける行為が一般的になった。

 バイラル・キャンペーンの実施フローは、
(1)プランニング
(2)クリエイティブ
(3)シーディング
(4)トラッキング
の4ステップで行われる。

 プランニングとクリエイティブの段階では、
(1)ターゲット層の明確化
(2)ブランド・メッセージの決定
(3)クリエイティブにおけるクチコミ要素の検証
(4)マスメディアなどほかのメディアとの連動についての検討および方法の策定
などを行う。ターゲット層を明確化しておかないと、たとえ広まってもブランド・メッセージが伝わらないからだ。

 インフルエンサーなどを使ったシーディング(seeding:種まき)は、目標期間内にバイラルアドが実際にクチコミで広がる可能性を最大化するために行う。「面白いCMを作ってYouTubeにアップすれば広がるのではという企業が多い。しかし、YouTubeには1日に何万本も映像がアップされる。いつ見られるのか分からないのでは意味がない。また、視聴数が多くてもターゲット層に見られていない可能性もある」(伊藤氏)。

 もっとも、バイラル・キャンペーンでブランドに対する消費者の認知度や関与度が高まっても、それを購入に結び付けるにはさらに施策が必要だという。例えば、高額な商品などの場合、消費者はネットで検索をして評判を調べることが多いが、そのときに商品への評価が低かったり、無かったりすると購入に結びつきにくい。したがって、ほぼ同時期にインフルエンサー向けにサンプル配布や体験型キャンペーンを行って評価をブログに書いてもらったり、テレビCM などのマスメディアと連動させるなどして相乗効果を図る必要があるという。

特集●NET Marketing Forumに見るマーケティング・イノベーション