写真●ベネッセコーポレーション ネットマーケティング部 部長の安田啓司氏
写真●ベネッセコーポレーション ネットマーケティング部 部長の安田啓司氏

 11月7日に東京・六本木の東京ミッドタウンで開催された「NET Marketing Forum Fall 2007」のユーザー特別講演で、ベネッセコーポレーションネットマーケティング部 部長の安田啓司氏が登壇。「女性会員100万人強を獲得したベネッセのコミュニティマーケティング戦略」をテーマに、講演を行った。

 2000年5月に開設した、女性向けコミュニティサイト「ウィメンズパーク」は、同社が発行する育児誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」、生活情報誌「サンキュ!」に連動する会員制のコミュニティサイト。サイト内には、100以上ものテーマに分かれた「会議室」と呼ばれる掲示板が置かれており、 20代後半から30代の女性を中心とする会員らの活発な意見交換の場となっている。現在、会員数は108万5千人に達し、月間のページビュー数は1億 1351万PVに上る。会議室での発言数は、1日に1万1600件も寄せられるほどの盛況ぶりだ。

 ウィメンズパークの企画にあたって安田氏は、「雑誌というマスメディアでは満足し得なかったニーズを先ず洗い出して、それをネットメディアで解決することを考えた」と明かした。その結果、ネットメディアの特性を生かした「個別対応」と「地域対応」を実現したのだという。

 個別対応では掲示板の開設によって、例えば子育てに関する特殊な悩みにも経験者が即座にアドバイスできる環境を提供した。また地域対応では、近隣の産科や小児科病院などについて体験に基づくリアルな情報を交換し合う場を与え、顧客の利便性を高めた。

 ウィメンズパークのような顧客向けサービスサイトを「接触ポータルサイト」と位置づけているという。この接触ポータルサイトの役割について安田氏は、「ネットを介して、私たちがターゲットとしている潜在的な顧客を獲得することが目的」と説明した上で、「接触ポータルサイトを構築することで、自社媒体の中でマーケティングを仕掛けながら顧客ロイヤリティを高め、購買につなげる確率を高めていくことができる」と、企業が自社媒体を持つメリットを示した。

 また安田氏は、具体的な施策に伴う効果測定の考え方についても触れた。同社では、サイトのログ解析や会員調査のほかに、会員ではない一般ユーザーを対象にして定期的に調査を実施。非会員が、なぜ会員登録しないのかなどを一般調査の結果から分析しているという。

 安田氏は、「ログ解析を行うだけでは、サイトへ頻繁にアクセスしてくれるアクティブなユーザーの動向しか分からない。顧客を増やすためには、まだ会員になってくれていないユーザーをマーケティングすることが重要だ」と明言。最後に「仮説がヒットする可能性は高くないが、実施策を検証しながら改善を行っていくことで、ヒットの確率を高めていくことができる」とアドバイスした。

 同社が企業サイトを立ち上げたのは1997年で、Yahoo! Japanや楽天といった本格的なネット事業の創業期と重なる。1999年4月にはインターネット事業に重点を置く経営方針を掲げ、顧客向けサービスを補完する専門サイトの開設に着手した。現在は、Webからの問い合わせや資料請求が全体の7割ほどを占めるなど、顧客との接点としてネットメディアが重要な役割を担い、企業の売り上げにも大きく寄与するまでに至っているという。

 安田氏は今後5年の間に、企業内でのネットメディアの役割はさらに拡大すると予測する。「インターネットの利用者人口はそう伸びないものの、利用者一人あたりの利用時間や接触頻度は着実に増えていく。企業はネットをコミュニケーションやマーケティング手段のみならず、商品やサービスそのものの仕組みに活用していくようになるだろう」との考えを述べた。

特集●NET Marketing Forumに見るマーケティング・イノベーション