2007年に入って相次いだ、日本企業によるSecond Lifeなど3次元(3D)仮想世界への参入。これらの活動で、どの程度の効果が得られたのだろうか。11月7日に東京で開催された「3Dインターネット・カンファレンス」のパネルディスカッションで、各社のマーケティング実務者がその内実を明らかにした。

 パネルディスカッションのテーマは「仮想空間/3Dインターネットにマーケッターはどう向き合うべきか?」というもの。9月の「世界柔道2007」に関するイベントをSecond Lifeで開催した博報堂DYグループの相川雅紀氏(写真1)をモデレータに、Second Lifeに仮想モールを出店したパルコシティの守永史朗氏、SUV車「NISSAN X-TRAIL」の「島」をSecond Life内に設けた日産自動車の工藤然氏、開発者会議「REMIX07」のイベントを日本製3D仮想世界「splume」で開催したマイクロソフトの関田文雄氏、Second Life内で放送局「Virtual World Broad Casting」を立ち上げたデジタルハリウッド大学院の三淵啓自氏が、パネルに参加した。

写真1●博報堂DYグループの相川雅紀氏
写真1●博報堂DYグループの相川雅紀氏

 博報堂DYグループがフジテレビと共同で開催したSecond Life内の世界柔道2007連動イベントは、谷亮子選手や井上康生選手などの日本代表選手のアバターが、Second Life内で試技などを披露するものだった。博報堂DYグループの相川氏は、「世界柔道2007開催期間中の3日間で、498人のユニーク・ユーザーがイベントに来訪し、総滞在時間は205時間37分に及んだ」と語る。イベントの効果はSecond Life内に留まらず、Second Lifeのイベントの模様を動画でキャプチャして、YouTubeに公開したユーザーもいた。そちらの動画も、期間中に1000回以上、11月までの累計で2000回以上再生された。これらを踏まえて相川氏は「『良い数字』だったのではないだろうか」と語る。

パルコシティは水着を400着配布

写真2●パルコシティの守永史朗氏
写真2●パルコシティの守永史朗氏

 パルコシティは2007年6月に、同社のショッピング・モールを模した「バーチャル・モール」を、Second Life内に出店した。同社の守永氏は、「ブランド認知を促進する場としてSecond Lifeを捉え、バーチャル・モールの模様を渋谷の街頭テレビやインタネットでも放映した」と語る。

 同社では、バーチャル・モールを訪問したユーザーに、アバターが着用できる水着やTシャツをプレゼントした。これらの衣類は、現実のショッピング・モールで販売されているものと同じデザインである。配布数は水着が200着、Tシャツが400着に及んだという。

 守永氏(写真2)は、ブランド認知の効果に関しては、課題も感じているという。「問題は顧客は誰か、ということ。Second Lifeは商品を販売するビジネスの場ではなく、広告メディアとして使うのが妥当。とはいえ、Second Lifeの主要なユーザーは『30代の会社員で、毎日Second Lifeにログオンする』という層であり、果たして当社のメイン・ターゲットであるかは疑問だ。Second Lifeに出店したこと自体がニュースになるような、2次的な広告効果を狙うしかないのではないだろうか」と守永氏は語る。