Linuxの普及促進や標準化などを行う非営利団体「The Linux Foundation Japan」は2007年11月1日,技術者向けイベント「The Linux Foundation Japan Symposium」を開催した。6回めの開催となる今回は,仮想化技術にかかわる技術者らが,仮想化技術の動向や,「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)の実装などについて講演した。

2009年カーネル・サミットは日本で開催


The Linux Foundation Executive DirectorのJim Zemlin氏
[画像のクリックで拡大表示]

米IBM社のTheodore Ts'o氏
[画像のクリックで拡大表示]
 シンポジウムはThe Linux Foundation Executive DirectorのJim Zemlin氏(写真1)による,Linuxのさまざまな領域での多様な使われ方の紹介から始まった。例えば,スーパーコンピュータの分野では実に75パーセントのシェアを持っているという。普及の理由は,他より良いものがより早くLinuxに実装されるから。Linuxカーネル自体は3カ月に一度,ディストリビューションも6カ月に一度は新版が出る速度で開発され,「むしろハードウエアの方が進化に追いつけない」(Zemlin氏)ほどという。

 こうした急速な開発を支えるのが世界中の開発者である。アジアや日本からの参加も増えている。2007年6月にカナダのオタワで開催された技術者会議「Linux Symposium」でも複数の日本人の発表者がいたことに触れた(関連記事「PS3やTOMOYOがデビューを果たしたOttawa Linux Symposium 2007」)。

 さらに同氏は,「Linuxのオリンピック」(Zemlin氏)である「Linux Kernel Developers Summit」(カーネル・サミット)が2009年には東京で開催されることを明らかにした。カーネル・サミットは,年に一度,カーネル開発者がFace-to-Faceで語り会う技術者会議である。1999年から毎年1度開催され,これまでさまざまな成果を挙げている。

 カーネル・サミットについては午後のパネル・ディスカッションでも取り上げられた。そこでは,米IBMのTheodore Ts'o氏(写真2)が過去の開催状況や将来の予定などを紹介した。

 カーネル・サミットはこれまで,Linux Symposiumと同時期にオタワで開催されるのが通例だった。米国ではなくカナダで開催されていたのは,Ts'o氏によれば「ビザ取得の容易さ」と「デジタルミレニアム著作権法を避けるため」だったという。

 しかし,2007年は英国のケンブリッジで開催された。これはカーネル開発者の3分の1が欧州人であることを考慮したためだ。東京での開催決定の背景にも,日本やアジアの開発者の活動が活発化したことがある。

 なおTs'o氏は個人的な考えと前置きした上で,「カーネル・サミットに合わせて日本のコミュニティと共同で大規模なテクニカル・カンファレンスを開催するのはどうか」と提案し,他のパネル参加者らもこれに賛意を示した。