米Microsoftは2007年10月,「Windows Vista」の累積販売数が8500万本になったと発表した。なお「Windows XP」は,発売から9カ月という同じ期間に4500万本売れている(関連記事:Windows Vistaが年末までに1億ユーザーを突破へ)。この成果は,ネットにWindows Vista関連の中傷記事があふれている状況を考えると,特に強い印象を受ける。なお,中傷記事のほとんどは根拠がなく必ずしも信用できない。これに対しMicrosoftは,本当のところWindows Vistaは全面的に上向きで,販売が急激に伸びているとした。

 販売急増の理由としてMicrosoftは,最大のWindows顧客である動きの遅い企業がWindows Vistaへの移行を始めたことを挙げる。企業はこれまでのOS同様,Windows Vistaの導入を自分たちの計画に従って進めているのだが,発売から1年近く過ぎた現在,販売が急増した。この急増とホリデー・シーズンのパソコン販売とタイミングが一致することで,2007年第4四半期は,失敗作とされるWindows Vistaにとって素晴らしい四半期になるだろう。

 Microsoftプラットフォーム&サービス部門担当プレジデントのKevin Johnson氏は11月第1週,英Reutersのインタビューで「販売が調子に乗ってきただけでなく,事業展開も好調になり始めた感触を得ている」と述べた。Windows事業の四半期ごとの成長率は,Windows Vista発売以降20%以上を維持しており,年成長率は25%になる見込みだ。さらに興味深いことは,MicrosoftがWindowsの売上高1ドル当たり75セントの利益を得ている点だろう。

 Windows Vistaが財政的に大成功している理由の一つは,記録的な数の消費者がハイエンド・エディションに向かったからである。2007年第3四半期の状況をみると,販売されたWindows Vista全体の75%以上が「Home Premium」や「Ultimate」という(より高額な)ハイエンド・エディションだった(Windows XPでは59%がハイエンド版を選んだ)。Microsoftが「Windows Vistaは従来のWindowsよりもエディションを増やし,低価格帯と高価格帯に分ける」と決めたところ多くの批判を受けたものの,この決定が成功だったことは明らかだ。ハイエンド・エディションで得られるメリットについて「消費者を教育する」活動を,Microsoftはうまく進めている。

 Johnson氏は,ホリデー・シーズンが過ぎても,2008年第1四半期にWindows Vista初のサービス・パック「Service Pack(SP)1」がリリースされるタイミングで発生する企業購入によって,販売が再び増えると予測する。Microsoftの企業顧客は,Windowsの新版導入をSP1リリースまで待つところが多い。Windows事業の前受収益は,2007年第3四半期に27%も増えた。これは,顧客がWindows Vistaへの移行を準備し始めたことを示している。前受収益とは,製品の購買契約を結んだものの,客先に納品しておらず,導入前の状態にあることを指す。Johnson氏は「この前受収益は,すべて今後導入されるWindows Vistaから生まれた」とした。