10月に民営・分社化した日本郵政グループで、民営化後に初めてとなる同月分の給料が正しく支給されていないケースがあることが分かった。一部の社員で、通勤や扶養などの手当てが実際より少なかったり、保険料などが控除されなかったりしたという。

 支払いミスの影響を受けた社員は、10月分の給与支払日である10月24日までに確認できた範囲で「約500人」(日本郵政広報)。民営化直前に出向先の総務省から日本郵政公社に戻った社員や、民営化準備会社出身の社員などに該当者が多いもよう。

 原因は、人事給与システムにおける人事データの移行漏れの可能性が高い。システムは、民営・分社化に伴い刷新したもの。日本オラクルのERPパッケージ「PeopleSoft」を、サン・マイクロシステムズや日本ヒューレット・パッカードなどのUNIXサーバー約30台で動かしている。開発および運用保守は、NTTコムウェアが担当する。

 人事給与システムの開発プロジェクトは、4万3000人月におよぶ民営・分社化のシステム対応の中で、開発が大幅に遅れるなど「問題案件」とされていた1つだった。職員数が24万人と組織が巨大、省庁再編など過去の経緯が複雑、特定郵便局など独自の制度があるなど、超難関級の案件とされていた。にもかかわらず、人事部門主導で進めたことから、プロジェクトは要件定義から難航。2007年に入ってからIT部門が支援に乗り出した。非常勤職員の機能は旧システムを使い新システムに盛り込まないことを決断するなど、要件を絞り込んで開発の遅れを巻き返し、なんとか10月に間に合わせた経緯がある。

 今回の不具合は、顧客サービスには直結しない。そのため、日本郵政グループ関係者によれば、「稼働後の不具合に備えて、支払額の人的チェックや社員への確認の呼びかけ、ミスがあった際の対処方法などを準備していた」という。支払いミスに伴う差額は11月分の給与で精算する。