独SAPのヘニング・カガーマンCEO
独SAPのヘニング・カガーマンCEO
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 「ERP(統合基幹業務システム)パッケージは、エンドユーザーを中心に考える時代になってきた」。独SAPのヘニング・カガーマンCEO(最高経営責任者)は、10月29~30日に開催しているSAPジャパンの年次カンファレンス「SAP SAPPHIRE ’07 Miyazaki SEAGAIA」の基調講演でこう宣言した。「ERPパッケージが登場した当初、最大の目的はデータの集中管理にあった。それが達成されると、目的はビジネス・プロセスの管理に移った。今、ERPパッケージが目指しているのは、エンドユーザーに最大の利便性を提供することにある」(同)。

 カガーマン氏は、エンドユーザーの利便性を追求するためにカギとなる要素の一つとして、Web2.0と総称されている技術を挙げる。「Web2.0の技術を利用すると、ERPパッケージが扱う構造化したデータと、その他の非構造化したデータを組み合わせて、それぞれのエンドユーザーに適する形で届けることができる」(カガーマン氏)。

 SAP版SOA(サービス指向アーキテクチャ)であるEnterprise SOAも、エンドユーザーに利便性を提供するうえで重要だと、カガーマン氏は指摘する。「Enterprise SOAに基づいて社内外のアプリケーションを連携させれば、データ、プロセスの両面で社内だけでなく、取引先や顧客を巻き込んだシステムを構築できる。これにより、社内外を問わず対象とするエンドユーザーの幅を広げることができる」(同)。

 カガーマン氏は、こうしたERPパッケージをはじめとするアプリケーションの将来像に加えて、同社の企業戦略についても言及した。買収については、「仏ビジネスオブジェクツ(BO)を買収したときのような大型買収は、当分ないだろう」(同)と明言する。

 ただし、同社は買収をしないわけではない。「これまでも、当社は多くの企業を買収してきたが、そのほとんどは小規模。我々は、自立的な成長を基本方針としている。市場でリーダーになれる分野以外の買収はないだろう」(カガーマン氏)。BOを買収した理由は、「BOと当社との製品ポートフォリオが補完的にあるからだ」(同)。

 カガーマンCEOはこのほか、米国で9月19日に発表したオンデマンド型の中堅企業向けERPパッケージ「SAP Business ByDesign」について言及。「オンデマンド型でアプリケーションを提供したのは、社員数100~500人の中堅企業という、ビジネス・ボリュームのある分野にリーチできる可能性を探りたかったから。大企業向けについては、オンデマンド型での提供は考えていない」と強調した。