TISの岡本晋社長
TISの岡本晋社長
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 TISは10月26日、2008年3月期の業績予想を下方修正したと発表した。連結の売上高は50億円減の2000億円に、営業利益は20億円減の80億円、経常利益も20億円減の88億円となる見通しだ。

 今回の業績予想の修正の原因について、岡本社長は次のように説明する。「07年度のカットオーバーを見込んでいた大型案件に、システムテストを大幅追加した。最大で約1年ほど稼働時期をずらし、その間1500人分の開発要員を確保するために必要な費用を今期に計上した結果だ」。追加テストに必要な費用総額は推定で約200億円。これをTISとユーザー企業で折半する形で捻出する。TIS側の持ち出し分は80~90億円程度を見込んでいる。

 TISはこの開発案件のユーザー企業名を明かさないが、クレジットカード大手のジェーシービー(JCB)とされている。JCBは新基幹システムの構築に04年から着手し、07年度中の稼働を目指している。具体的なシステム内容は明らかにされていないが、他カード会社でも共同利用できるような共通基盤の仕組みを取り入れているとみられている。

 TISはこの7月、関連システムである加盟店向けの新システムを稼働させた。本来は5月に稼働するはずだったが、安定的な稼働を目指してテストを追加。結果、2カ月遅れにはなったが、トラブルなく稼働に至っている。「この実績を見て、開発中のシステムでもテストを追加したいという申し入れが7月にあった」(岡本社長)。

 ユーザーが求めたテストの中身は平行本番稼働や、他社システムとの包括的な連携テストなど。システム間のインタフェース周りだけではなく、連携先企業も含めたビジネスサイクルを動かすテストが必要とユーザー側が判断した。TISはこの大がかりなシステムテストを当初の予定にない仕様変更と捉えたが、ユーザー側はTISと結んだ一括請負契約の範囲内と判断。追加テストに必要なコストの負担を断ったという。

 そこでTISは法廷闘争も辞さない覚悟でユーザー企業と話を詰め、第三者であるITベンダーの役員クラスのIT専門家1人、IT業界に詳しい弁護士1人を調停委員として選出し、この2人の判断を仰ぐことで合意した。「その結果、TIS側の意見を採り入れ、追加テストは仕様変更の一部だという判断をもらった」(岡本社長)。しかし、ユーザー企業の全額負担というわけにはいかず、80億円程度の追加コストをTISが負担することになった。