写真●モバイル・セントレックスを展開している大阪ガスの松坂情報通信部長
写真●モバイル・セントレックスを展開している大阪ガスの松坂情報通信部長
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 「当初は固定電話を1万1000台から2000台にまで減らす計画だったが,実際には2900台。4000台あった携帯電話も,すべてIP電話対応のFOMAに入れ替える予定だったが,現状では900台が残っている」---。大阪ガスの松坂英孝 情報通信部長は10月25日,東京ビッグサイトで開催している「IPコミュニケーション&モバイル2007」の基調講演で,同社のモバイル・セントレックスへの取り組みの現状を明かした(写真)。

 大阪ガスが,無線LAN上でのVoIP(voice over IP)内線通話が可能な携帯電話「FOMA N900iL」を全面採用し,モバイル・セントレックス導入に取り組み始めたのは,2004年のこと。49台あるPBXが老朽化していたことと,席替えのたびに発生する内線電話の移転工事費が負担になっていたことがその理由である。49台のPBXを必要最低限の17台に減らし,移転工事費や通話料を削減した。

 当初の計画では,それまで使っていた従来型の携帯電話はすべてN900iLに入れ替える予定だった。しかし,「ガス会社の業務には,FOMAの通信エリア外のものが多いことがわかった。そのため,すべてFOMAにするわけにはいかず,900台はそのまま使用している」(松坂部長)。

 また,2006年に相次いで発生したNTT西日本のひかり電話の障害も,大阪ガスの戦略に影響した。「ガス会社としては,災害時における通信手段の確保は不可欠。信頼性の面では,IP電話よりも従来型電話のほうが優れている」(松坂部長)と判断。当初計画では従来型固定電話を2000台にまで減らす予定だったが,2900台を残すことにしたという。

 ただ,以前は合計で1万6000台あった固定電話と携帯電話を,1万3300台にまで削減。当初計画値である1万3000台に近いところまで台数を減らすことはできた。コスト面でも,年間で14億5000万円かかっていた電話関連費用を,9億9000万円にまで圧縮。「携帯電話の台数が想定より多かったため,計画値である9億7000万円よりは膨らんだものの,ほぼ計画通りのコストダウン効果が得られた。今のところ業務に支障を来すようなシステム・トラブルもない」(松坂部長)。

 今後の課題は,全社員がこの新しい電話システムを使いこなすことだという。松坂部長は,「各社員が電話に出られる状態なのかなどを管理する『プレゼンスシステム』や,メールやスケジュールを閲覧できる『携帯電話ポータル』などのシステムを使って,業務を効率化することが重要だ。すべての社員が使いこなせているわけではない」と説明する。「ちょうど今,社員にアンケートを実施しているところ。それを今後に生かしたい」(松坂部長)。

 また,2007年度中に現行機種のN900iLを,新機種の「N902iL」に入れ替える予定だ。すでに約130台を試験導入。連続通話時間が延びたほか,端末操作のレスポンスや通話品質が改善されたことを確認したという。松坂部長は,「さらに現場の役に立つシステムを目指す。スマートフォンなども積極的に取り入れていきたい」という。