写真1●ケンコーコムの後藤玄利社長
写真1●ケンコーコムの後藤玄利社長
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 開催中のBiz Innovation 2007の基調講演で、ケンコーコムの後藤玄利社長が「ネット型経営を実践するためのIT戦略」と題して自社のネット戦略について語った。ケンコーコムは、健康食品や医薬品などを販売する健康関連総合EC(電子商取引)サイト。取り扱い商品点数が約8万3000点あり、1日20万人が訪問するサイトで「日本で最大規模のドラッグストアともいえる」(後藤社長)。講演では、1日の訪問者数20万人を広告費用をかけずに集客する秘けつを明らかにした。

 20万人の訪問者数のうち6割は、ヤフーやグーグルなどの検索エンジンからだという。「クエン酸」や「もろみ酢」など健康に関するキーワードで検索すると、上位に表示されることから同サイトへの訪問者が多いのだと後藤社長は語った。残りの4割もすでにブックマークしていたり、URLを直接入力して訪問するなどで、広告宣伝費をかけずに集客できている。

 広告宣伝費をかけない集客の実現には、消費者が購入する商品群が自社のサイトと街中にあるドラッグストアで違うという背景があると、後藤社長は説明した。街中にあるドラッグストアの売れ筋商品は、シャンプーなど日常生活に必要なものが占めている。テレビCMなどの宣伝広告によって認知度が高いナショナルブランドが多く、どこのお店でも売っているため価格競争が激しい。

 一方でケンコーコムにおける昨年度の売れ筋は、「白いんげん豆」や「杜仲茶」などニッチ商品であったり、テレビ番組で紹介されて人気となり品薄状態になった商品であったりと、近所には売っていない商品が多くを占めているという。それゆえに価格競争には巻き込まれないメリットがある。こうした効果を得るには商品点数を増やして顧客のさまざまなニーズに応えることが重要だと後藤社長は分析した。

 ケンコーコムは、健康に関する情報はすべて同社のウェブサイトで入手できる状態を目指している。情報量を最大化するには、取り扱い商品点数を増やすとともに、一品ごとの詳細な説明を加える必要がある。ただし、8万3000点ある商品情報をすべて社内の担当者20人だけでこなそうと試算すれば、情報の更新に520日かかってしまい不可能だと後藤社長は説明する。

 そこで同社が取り組んでいるのは、メーカーやユーザーなど社外の資源も活用して情報の充実を図る戦略である。「商品点数を増やすことには我々が取り組むが、低コストでサイトを運営するにはステークホルダー(利害関係者)の助けが必要になる」と話す。

 後藤社長は講演で、社外の資源活用事例をいくつか披露した。そのひとつが、消費者からの問い合わせにヤフーが提供するサービス「Yahoo!知恵袋」を活用する例である。同サービスは利用者が質問を投稿すると、質問内容に詳しいほかの利用者が回答するというもの。従来、ケンコーコムでは電話や電子メールで健康に関する相談を受けていた。5人の薬剤師が対応していたが、事業規模が拡大するにつれて薬剤師を増やさなければならないなどコスト増につながりかねなかった。商品を紹介するページに、Yahoo!知恵袋のリンクを張ることで、顧客満足度を下げることなくコストをかけずに問い合わせに対応できる環境を作った。

 商品情報の充実に社外を活用するもう一つの例が、商品を製造するメーカーによる広告である。ケンコーコムが商品を紹介するページに、メーカーが作成した商品を詳しく説明するサイトのリンクを張る。「より具体的な商品説明を加えることで消費者も納得感が高まる」(後藤社長)と説明する。メーカーにとっても、自社の製品に興味を持った消費者に特化して販促ができるため、高い広告効果を期待できる。ケンコーコムから見れば、商品情報の充実とともに広告収入にもなる。「自社単独で取り組むのではなくメーカーやユーザーを巻き込み、それぞれがメリットを得られるようにすることで、より良いサイトを作っていきたい」(後藤社長)と意気込み、講演を終えた。