Free Software Foundation代表でGNUプロジェクト創始者のRichard M.Stallman氏
Free Software Foundation代表でGNUプロジェクト創始者のRichard M.Stallman氏
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ジョークで,“Church of Emacsの聖人St.IGNU-cius”に扮したStallman氏。「Church of Emacsではプロプライエタリ・ソフトウエアを使うことは罪にあたる。viは獣のエディタ(vi vi viがローマ数字で"獣の数字”666を表すため)だが罪ではない」と冗談を飛ばした。光背のかわりに頭にかぶっているのはハードディスク
ジョークで,“Church of Emacsの聖人St.IGNU-cius”に扮したStallman氏。「Church of Emacsではプロプライエタリ・ソフトウエアを使うことは罪にあたる。viは獣のエディタ(vi vi viがローマ数字で"獣の数字”666を表すため)だが罪ではない」と冗談を飛ばした。光背のかわりに頭にかぶっているのはハードディスク
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 「GPLv3によって,『NovellのユーザーだけにMicrosftが特許の免責を与える』といったことはできなくなる」---Free Software Foundation代表でGNUプロジェクト創始者のRichard M.Stallman氏は10月24日,特定非営利活動法人 フリーソフトウェアイニシアティブ(FSIJ)が主催した講演会でこう述べた。

 FSFはLinuxなどが採用しているオープンソース・ソフトウエア・ライセンスGPL(General Public License)の新版,GPLv3を2007年6月に正式リリースした。「GPLv1では配布の際にバイナリだけでなくソースコードを入手可能にせよ,ライセンスを変更するな,ということを書いた。GPLv2ではソフトウエア特許という新しい脅威に対抗しようとした」(Stallman氏)。

 GPLv3では,さらに新しい脅威への対策を盛り込んだ,とStallman氏は言う。MicrosftとNovellは2006年に提携を発表し,Microsoftは同社が保有する特許に関しNovellの製品についてはNovellのユーザーを特許で訴えないとした。しかし,GPLv3ではプログラムの貢献者や再頒布者がユーザーに対して特許からの保護を与えることを条件としている。これにより「MicrosoftがNovellの顧客に特許与えた許諾は全員に拡張される」(Stallman氏)。

 そのほかGPLv3では,ハードウエアの保護機能によりソフトウエアの変更を禁止する「Tivoization」などにも対抗するとStallman述べた。GPLv3では,ソフトウエアをインストールに必要なキーなどの情報の提供が義務付けられる。

 「敵は賢い。GPLv3の条項をすり抜ける方法を考えるかもしれないし,ソフトウエアの自由に対する新しい脅威も出現するかもしれない。それらに対抗するために,いつかGPLv4も作ることになるだろう」(Stallman氏)。

 「かつて,ソースコードがないためにソフトウエアを修正できないという経験をした。私には修正する能力があるのにだ。ソフトウエアの自由が奪われていった。私には政治的なパワーも経験もなかったが,そのことに気づいていたのは私だけだった。溺れている人がいて,他に泳げる人間いなけば,自分がやるしかない。だから私は1983年にフリー・ソフトウエア運動を始めた」(Stallman氏)。

 Stallman氏は,かねがねLinuxではなくGNU/Linuxと呼ぶべきであると主張している。Linuxは厳密にはカーネル部分であり,その上にライブラリやコンパイラ,デスクトップ環境のGNOMEなど,GNUプロジェクトによって開発されている多数のソフトウエアが組み合わされOSとして機能している。だが,それだけでなく,ソフトウエアを改変する自由を実現するためにGNU/Linuxと呼ぶべきなのだとStallman氏は言う。

 「Linusの目的は,信頼できる,使いやすい,速いOSを作ること。開発者としての目標だ。GNUプロジェクトの目的はソフトウエアの自由を実現することだ。Linuxと呼んでいる限り,人々はGNUソフトウエアを使っていることに気がつかない。Linusのビジョンに従うことになり,ソフトウエアの自由とへは導かれない」(Stallman氏)。

 「自由な市場のもたらす競争がよい製品を生み出すと言われる。それなのに,ソフトウエアが自由でなければならないという主張すると,プロプライエタリ・ソフトウエアのベンダーはコミュニストだと言う。フリー・ソフトウエアはサポート・サービスの競争がある健全な市場を作り出す。我々は私有財産を尊重している。それぞれが持つソフトウエアのコピーは私有財産だ。ソフトウエアの自由がなければ,独占の中でしか選べない。我々はソフトウエアの自由の世界をサイバースペースに建築した。誰でも歓迎する」(Stallman氏)。