10月24日に報道陣向けに公開された「東京モーターショー2007」の会場で,アンヴェイル(除幕)イベントを実施し,その全容が明らかになった日産自動車の「NISSAN GT-R」(写真1)。その自動車開発において,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のゲームソフト子会社で,レースゲームの「グランツーリスモ・シリーズ」などを手がけるポリフォニー・デジタルが重要な役割を担っていたことをSCEが明らかにした。

図1●会場と同時にゲーム内でもアンヴェイル(除幕)イベントが行われた「NISSAN GT-R」   図1●会場と同時にゲーム内でもアンヴェイル(除幕)イベントが行われた「NISSAN GT-R」
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 SCEは10月24日,東京モーターショーの会場内において,ポリフォニー・デジタル代表取締役プレジデントの山内一典氏,日産自動車 製品開発本部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管 兼 チーフ・プロダクト・スペシャリストの水野和敏氏,マーケティング本部 マーケティングダイレクターオフィス マーケティング・ダイレクターの加治慶光氏によるトーク・セッションを実施(写真2)。その中で山内プレジデントはGT-Rの「マルチファンクションメーター」を,日産自動車とポリフォニー・デジタルが共同開発したことを発表した。

■修正履歴
タイトルと本文の一部に誤解を招きやすい表現がありましたので,修正しました。修正した個所は,以下の通りです。  [2007/10/29]

タイトル部分: 「多機能メーターはうちが開発した」→「多機能メーターを共同開発した」

本文部分: 『山内プレジデントは,GT-Rの「マルチファンクションメーター」の開発をポリフォニー・デジタルが行ったと発表した』→『山内プレジデントはGT-Rの「マルチファンクションメーター」を,日産自動車とポリフォニー・デジタルが共同開発したことを発表した』

写真2●左から,ポリフォニー・デジタル代表取締役プレジデントの山内一典氏,日産自動車 製品開発本部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管兼 チーフ・プロダクト・スペシャリストの水野和敏氏,マーケティング本部 マーケティングダイレクターオフィスマーケティング・ダイレクターの加治慶光氏
  写真2●左から,ポリフォニー・デジタル代表取締役プレジデントの山内一典氏,日産自動車 製品開発本部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管兼 チーフ・プロダクト・スペシャリストの水野和敏氏,マーケティング本部 マーケティングダイレクターオフィスマーケティング・ダイレクターの加治慶光氏
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 マルチファンクションメーターとは,ドライバーに必要なさまざまな情報をグラフィカルに表示する前席中央に配置された装置のこと(写真3)。水温,油温,油圧などのメーターやアクセル開放度などの統計情報を選択し,1からGまで11個あるボタンにドライバーがあらかじめプリセットしておけるというものだ。ポリフォニー・デジタルの山内プレジデントは,「ゲームのテクノロジが実車に導入された。これは歴史的なことだ」と感慨深げに語った。

写真3●マルチファンクションメーターでブースト圧,油温,油圧を表示させたところ(SCE提供)   写真3●マルチファンクションメーターでブースト圧,油温,油圧を表示させたところ(SCE提供)
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 また,今回の日産自動車とポリフォニー・デジタルのコラボレーションは,ポリフォニー・デジタルに大きな恩恵をもたらした。同社が開発した「グランツーリスモ 5 プロローグ」内のGT-Rを,より実車に近づけることに成功したというのだ。GT-Rの開発責任者である水野氏は,「乗り心地とハンドリング(のシャープさ)は,実は相反するものではなく両立するもの。グランツーリスモ内のGT-Rはそういった“乗った感じ”もよく再現されている」と評する(写真4)。

 走行面だけではなく「外観や質感にもこだわった」(山内プレジデント)。日産自動車でGT-Rのマーケティングを担当する加治氏は,その点も評価する。「役員会でグランツーリスモのビデオを流したことがあるが,ある役員から『いったいいつ映像を撮影したのか』という発言が飛び出すほどだ」(加治氏)。

写真4●「グランツーリスモ 5 プロローグ」内で疾走する「NISSAN GT-R」(SCE提供)   写真4●「グランツーリスモ 5 プロローグ」内で疾走する「NISSAN GT-R」(SCE提供)
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 山内プレジデントは,「かなり早い段階から実車のGT-Rのテスト・ドライブをさせてもらっていた」と,グランツーリスモ開発の裏事情を明らかにした。それも単に“乗せてもらった”というレベルではなかったという。「山内さんは我々の開発チームの一員のようなものだった」(水野氏)というのだ。さらに水野氏は,「米国のテスト・コースで私がGT-Rのテスト・ドライブをした後に,いろいろと指示を出していたときのことだ。ふと気付くとGT-Rがない。山内さんが知らぬ間に乗っていってしまっていた」といったエピソードも披露した。

 今後も両社は,協調関係を継続していく計画である。加治氏は「GT-Rはアンヴェイルしたばかりだし,グランツーリスモ 5 プロローグもまだ無料体験版の段階。実はまだ何も始まっていない。これからも一緒に世の中をドキドキさせることをやっていきたい」と語り,トーク・セッションを締めくくった。

 グランツーリスモ 5 プロローグはPLAYSTATION 3用のソフト。製品版の発売は12月13日の予定で,希望小売価格はブルーレイディスク版が4980円,ダウンロード版が4500円。

動画●「グランツーリスモ 5 プロローグ」のコンセプト・ムービー(SCE提供)
注)ここに含まれているGT-Rは2005年の「東京モーターショー」で公開されたGT-Rのプロトタイプであり,10月24日に発表された「NISSAN GT-R」ではない。
■修正履歴
記事掲載当初,グランツーリスモ 5 プロローグ製品版の発売予定日を12月3日としていましたが,正しくは12月13日です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/10/29 12:40]