米アドビシステムズとNECビッグローブは10月24日、企業向けのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業で提携した。第一弾として12月3日から、アドビの文書管理ソフトを基に開発した新サービス「BIGLOBEドキュメントコントロールサービス」を提供する。

 新サービスでは、まず管理者が、PDF文書の閲覧や印刷、複製といったポリシーを定義する。PDF文書の作成者は、定義済みのポリシーの中から、適切なものを文書に付与できる。文書の閲覧者は、ネットに接続したパソコン上でIDとパスワードを入力し、ポリシーに沿って閲覧する。ポリシーについては、閲覧の権限だけでなく、閲覧可能な期限も設定できる。NECビッグローブは、利用者管理やポリシー管理、閲覧履歴の管理といった機能を、同社のデータセンター経由で提供する。

 アドビが米国以外で、同様な文書管理サービスを提供するのは、今回が初めて。アドビ日本法人のギャレット・イルグ社長は、NECビッグローブと提携した理由として、「インターネットのサービス・プロバイダとしての実績とサービスの信頼性、ネット・サービスの基盤を構築・運用する技術力」を挙げた。アドビは国内の主要プロバイダを比較検討。アドビが求めるこれらの要件をほぼフルマークで満たしたのがNECビッグローブだった。

 NECビッグローブの東出正裕 執行役員サービス開発本部長は具体的な利用例として、取引先への提案書や見積書への適用を挙げる。取引先へ見積書を送付する場合に、閲覧権限に加えて失効日を指定しておく。「期限が過ぎた文書は自動的に閲覧不能になるため、高いセキュリティを容易に保つことができる」(同)。ほかにも新製品開発プロジェクト期間中に関係者だけに閲覧させるなど、「文書を扱うあらゆる業種で、このサービスを利用してもらえる」(同)。

 NECビッグローブは来春にも、PDFに加えてWordとExcelのファイルも同サービスで扱えるようにする。さらに、同サービスのWeb APIを公開する計画だ。これにより、同サービスを単体の文書管理サービスとしてだけでなく、マッシュアップを使って情報システムを開発する際の「素材」としても利用できるようにする。企業やシステム・インテグレータは、このWeb APIを使って社内システムや他のWebサービスを組み合わせて、新しいシステムを開発できる。

 アドビのイルグ社長は、「今回のサービスは、第一弾に過ぎない」として、提携の範囲をさらに拡大させていくことを明言した。具体的には、リッチクライアント・アプリケーションの実行技術「AIR」を使ったサービス、スマートフォンやPDA(携帯型情報端末)などでも利用できるサービスを、NECビッグローブが提供する。

 具体例としては、米アドビがベータ版を提供中の文書共有サービス「Share」や、この10月2日に買収を発表したWebワープロ・サービス「Buzzword」などが候補に挙がっていると見られる。NECビッグローブの飯塚久夫 代表取締役執行役員社長は、「セキュリティの高さや運用の容易さに加えて、オフィス・アプリケーションを保有する総コストを低減できることをアピールできるようになれば、企業向けサービスとして非常に魅力的だ」と語り、企業向けの総合的な文書管理サービスへ発展させていくことを示唆した。

 BIGLOBEドキュメントコントロールサービスの料金は、初期費用が40万円、月額利用料は500IDまでが60万円、それを超えて1000IDまでが80万円など。今後3年で、500社、30億円の売り上げを見込む。