写真1●NTT(持ち株会社)・サイバーソリューション研究所の岸上順一所長
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写真2●IPTVサービスとは,映像を放送,オンデマンド,ダウンロードの3形態で楽しめるもの
写真2●IPTVサービスとは,映像を放送,オンデマンド,ダウンロードの3形態で楽しめるもの
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 「IPTVは,次の50年間の世界をけん引する産業に発展する可能性がある」。東京ビッグサイトで開催中の「IPコミュニケーション&モバイル」のIPTVトラック・基調講演において,NTT(持ち株会社)・サイバーソリューション研究所の岸上順一所長は,IPコミュニケーションをベースにした映像・コンテンツ産業の可能性を展望した。

 プレゼンの冒頭で岸上所長は,「コンドラチェフの長周期波動」を引用し,「産業界の大きな構造変化は50~60年周期で起こっている」と指摘。1850年前後に登場した自動車,1900年前後の電気・化学分野の基礎技術の発見,1950年代のトランジスタの登場に次いで,次の50年に発展する産業は2000年前後に登場しているはずだと,予想した。

 そして,ちょうど2000年から2010年にかけて新サービスとして離陸しようとしている「IPTV」がその核となる可能性があるのではないか,とした。岸上所長のイメージするIPTVサービスとは,映像を放送,オンデマンド,ダウンロードの3形態で楽しめるようにするものだという。

 それから,世界の中でも日本の産業界は,IPTVサービスを実現するうえで重要な三つの条件を備えているとした。三つの条件とは,第一に世界の中でもきわめて安価なブロードバンド(高速大容量)サービス,次に,世界でも国産機が7割前後のシェア(市場占有率)を持つ大画面の薄型テレビ,そして最後に地上デジタル放送やBSデジタル放送で流れている高精細なハイビジョン映像コンテンツ--である。これらの3条件が整っている日本はIPTV産業で世界をリードしていける,とした。

普及するための三つの要素

 さらにIPTVサービスが普及するためには「標準化」と「パーソナライズ化」,「新たなコンテンツの登場」の三つの要素によって,ユーザーのサービス体感品質(Quality of Experience=QoE)が向上することが必要だという。

 標準化については,現在日本のメーカーや通信事業者,放送事業者らが共同で運営している「IPTVフォーラム」の活動を紹介した。フォーラムでは,共通のIPTVサービス仕様を2007年度中に固めることを目標としている。2008年中に,ブロードバンドにつなぐだけで様々な事業者のIPTVサービスが選べるデジタルテレビが家電量販店の店頭に並ぶのではないかと,展望した。

 一方,多様な映像サービスが提供されることで,ユーザーに自分の見たい映像をどう選んでもらうかが重要になるという。その際に,映像の属性やジャンルなどを記述した「メタデータ」を活用したコンテンツへの誘導が発展する必要があるとした。

 コンテンツ面では,単純に既存の映像サービスを代替するだけでなく,IPTVならではの新しいコンテンツ体験が成長のカギとなるという。そこで岸上所長は,米Appleが開発したiPhoneを例に出し,デジタルカメラ,録画再生装置,携帯型情報端末など,これまでネットワークを活用してこなかった機器とテレビとの連携がカギになるのではないか,と講演を締めくくった。