写真1●カルビーの中田康雄社長兼CEO
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写真2●馬鈴薯システム全体像
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 「当社はほぼ10年おきに主力商品を提案してきた。今後さらにその成長を高めるためにITを駆使している」。カルビーの中田康雄社長兼CEOはBiz Innovation 2007の基調講演でこう語った。

 同社がITを使うのは大きく2つの目的がある。1つは主力製品の「ポテトチップス」や「じゃがりこ」といった商品の原料であるジャガイモの質と量を向上させるため。もう1つは顧客や店頭に対して効果的なプロモーションを実施するためだ。どちらもデータの収集し現状を「見える化」することで改善活動を実施することがカギだ。

 畑に対する戦略について中田社長兼CEOは「欧米に対して30年遅れている生産性を巻き返したい。そのためにはITを使って、農業の生産プロセスに工業的なアプローチを導入する」と語る。カルビーでは栽培作業やジャガイモの貯蔵作業において、どのような条件で作業を実施したかをデータベースに蓄積している。その結果として収穫量と品質を測定。これらのデータを基にして改善活動の検証サイクルを実施する。契約農家に対しても、収穫時に質と量のデータをフィードバックし、改善点の検証を促す。

 もう一方の、プロモーション戦略では約240人いる店舗ごとの営業担当者がデータを入力する。担当者は一人で30~40店舗を訪問し、訪問履歴や売上実績、店舗で収集した顧客の声などをデータベースに格納する。入力は携帯電話を使う。顧客の声などの自由記入項目は、携帯電話端末から入力するのではなく、バックオフィスの担当者に携帯電話を使って口頭で伝え、入力作業を任せる。

 「営業担当者に極力入力負荷がかからないようにしたのがよかった」と中田社長兼CEOは説明する。これにより、販促キャンペーンの効果、売り上げ状況がほぼリアルタイムに把握でき、本部での営業戦略立案に役立っている。

 すでに効果も出ている。2000年には、生産後45日以上たった製品が店頭の10%ほどを占めていたが、05年の時点では約3%まで減った。これは、鮮度を保障するビジネス・プロセスが総合的に機能していることを示している。「このようなことはITを活用しなければ考えられなかった」と中田社長兼CEOは強調した。