米CodeGearのニック・ホッジスDelphiプロダクト・マネジャ
米CodeGearのニック・ホッジスDelphiプロダクト・マネジャ
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 米Borland Softwareの開発ツール部門であるCodeGearで,開発ツール「Delphi」のプロダクト・マネジャを勤めるニック・ホッジス(Nick Hodges)氏が来日し,Delphiの開発計画を報道機関向けに説明した。基本的には,日本法人のボーランドCodeGear事業本部が6月に公開したロードマップ(リンク先はこちら)を踏襲しているが,提供時期や開発コード名の由来など,いくつか更新された情報もあった。発言の要旨は以下の通り。

 DelphiとC++Builderは多くの企業が求める開発スタイルを提供している。(1)簡単,高性能で拡張性があること,(2)Windows Vistaを始めとする新しい環境に容易に対応できること,(3)Win32ネイティブ・アプリケーションを開発できること,が特徴だ。Javaと.NETが登場してマネージド・コード(メモリーの利用を仮想マシンが管理するコード)が主流になると言われたが,実際にはWin32ネイティブ・アプリケーションへの揺るぎない需要が続いている。パフォーマンスが良いこと,ハードウエアの制御やグラフィックスの処理がきめ細かく行えることがその理由だ。

 64ビット(Win64)のネイティブ・アプリケーションを作りたいという顧客の声も非常に強い。クライアント・ソフトとサーバー・ソフトを同様の手法で開発したい,Win32で開発したソフトウエア資産を移行させたいといったニーズがある。64ビット・ネイティブのRAD(Rapid Application Development)ツールを開発しているのは,現在のところ当社だけだ。

 2007年には,Delphi 2007,C++Builder 2007,RAD Studio 2007を投入した。2008年には,Delphiの次期版(開発コード名「Tiburon」),C++Builderの次期版「Barracuda」を投入する。Tiburonは年半ばくらいになるだろう。2008年から2009年にかけての冬にはその次のバージョン「Commodore」を投入する計画だ。Tiburonは現在と同じWin32と.NETの開発ツールだが,Commodoreでは64ビット・ネイティブ・アプリケーションの開発が可能になる。

 Tiburon(oの上に点)はスペイン語で鮫を指す言葉だ。San Joseにあるアイスホッケー・チーム「San Jose Sharks」から取った。Tiburonでは,Win32開発のUnicode(ユニコード)化を実施する。日本を始めとするアジアではそのメリットが大きい。.NETにマッチするデータ型をWin32開発でも使えるようにすること,先日投入した軽量なリレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)である「Blackfish SQL」をベースに,BDE(Borland Database Engine)を更新することも計画している。BDEは古いが安定したデータベース・システムで,多くの開発者に使われている。新しいテクノロジをベースに,BDEの時と同様の開発手法を採れるようになる。

 Commodoreは,懐かしいコンピュータ「Commodore 64」(64キロバイトという当時では大容量のメモリーを搭載していたため)から名付けた。IDE(Integrated Development Environment,統合開発環境)は32ビットだが,64ビット・ネイティブのプログラムを開発可能にする。

 2009年以降になるCommodoreより先のバージョンでは,マルチコア/マルチスレッド開発の支援,PDA(Personal Digital Assistant)や.NET Compact Frameworkへの対応,Silverlight(米Microsoft)やFlex(米Adobe Systems)などを使ったリッチなインターネット・アプリケーションの開発,Windows上で開発して他のOS上でソフトを動かすクロス・コンパイルなどを研究している。マルチコアのコンピュータはすっかりポピュラーになったが,それを生かすマルチスレッド・アプリケーションの開発は簡単とは言えない。容易にマルチコアのメリットを享受できるように,何かできることがないか考えている。