写真1●周囲の様子を360度写し込めるUSBカメラ「RoundTable」
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写真2●RoundTableを導入する日産自動車の行徳セルソ執行役員CIO(最高情報責任者)グローバル情報システム本部長
写真2●RoundTableを導入する日産自動車の行徳セルソ執行役員CIO(最高情報責任者)グローバル情報システム本部長
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写真3●OCSと組み合わせて利用できるIP電話機
写真3●OCSと組み合わせて利用できるIP電話機
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 マイクロソフトは10月17日、企業内コミュニケーション用のソフト製品群を11月から順次出荷すると発表した。Web会議やIP電話、インスタント・メッセージ(IM)、プレゼンス(居場所や状態)情報の確認といったビジネスパーソンのコミュニケーションを支援するためのもの。核となるのはサーバー・ソフトの「Office Communications Server(OCS)2007」とクライアント・ソフトの「Office Communicator 2007」だ。

 「電子メールやインスタント・メッセージ、音声、Web会議など、数多くの選択肢を適切なときに適切なタイミングで使い分けられるようにする」。樋口泰行 代表執行役兼COO(最高執行責任者)は、新製品の意義をこう語る。

 サーバー・ソフトのOCSは、電話交換機の役割を果たすIP-PBXの機能や、在籍中/離籍中といった社員のプレゼンス情報を管理する機能、Web会議を管理する機能などを備える。パソコン側には専用のクライアント・ソフトであるOffice Communicatorをインストールする。常駐型のクライアント・ソフトのウインドウを開くと、他のメンバーのプレゼンス情報を確認できる。各メンバーとの関係の深さに合わせて、「同じプロジェクトのメンバーなので細かく知らせる」、「他部署のメンバーなので知らせる必要はない」というように情報を出す深さを変えることもできる。

 メーラーおよび個人情報管理ソフトであるOutlookとの連携機能も備える。先に挙げたプレゼンス情報の表示については、Outlookに入力した予定表の内容を反映できる。また、メールの送受信者の部分で、オンライン/オフラインといったプレゼンス情報を確認できる。あて先の部分をクリックすると、メールだけでなく電話やIMなどほかの手段も選択できるようにした。

 「Office CommunicatorやOutlookで在席かどうかを確認し、IMで連絡を取ってもいいか打診し、その後IP電話で会話を始める。必要なメンバーをOffice Communicator上で招集しながら、コミュニケーションの場をWeb会議に移行する。こんな形でコミュニケーションの形態や場をスムーズに移行できるのが売り」(インフォメーションワーカービジネス本部の越川 慎司リアルタイムコラボレーション製品マーケティングマネージャ)という。アプリケーション・ソフトで作った資料の共有もOffice Communicator上で可能だ。

 従来から提供しているWeb会議サービス「Office Live Meeting」の機能も強化し、11月1日から同時開催人数を増やすなどリニューアルを図る。料金は一律1人2000円である。

360度カバーするWeb会議用のカメラも投入

 マイクロソフトはOCSと同時に、ハードウエア製品「RoundTable」を投入する(写真1)。いわゆるUSBカメラの1種で、内部にカメラを複数搭載しており、会議室などで周囲の様子を360度写し込むことができる。最大の特徴は、しゃべっている人物を自動的にフォーカスする機能。画像認識のロジックとマイクで拾った音量をキーにして、しゃべっている人の顔をとらえ、フォーカスする。OCSと協調動作し、動画を遠隔地に配信することも可能だ。RoundTableは11月中に販売を開始する予定。

 マイクロソフトの樋口COOは、「統合コミュニケーションは、マイクロソフトが特に力を入れている製品分野。米国ではビル・ゲイツ自身が登壇し、発表するほどの力の入れようだ」とその位置付けを語る。併せて「日本は情報システムの部門最適が進んでおり、全社を横断した情報共有や情報ガバナンスを実施しにくい状況がある」と指摘。「部門の壁を取り払う突破口はコミュニケーション。そのための道具としてOCSを使っていただきたい」(同)。

日産自動車がRoundTableの導入を決定

 発表会では、早期導入企業の1社として日産自動車の行徳セルソ執行役員CIO(最高情報責任者)グローバル情報システム本部長が登壇した(写真2)。同社はマイクロソフトと共同で、RoundTableをベータ版の段階から利用し、検証を続けてきたという。

 日産はITの推進・管理拠点を日本をはじめ世界に4拠点持っている。総人数は約1200人に上るという。「世界各国に拠点を持っている日産では、いかにコミュニケーションを迅速に、スムーズに、負担なく進めるかが大きな課題だった。RoundTableはこの課題解決に大きく貢献しそうだ」(行徳氏)という。導入に協力したのはマイクロソフトと日本ユニシス。行徳氏は記者発表会場(ホテルニューオータニ)からインターネット回線を通じ、日産自動車のオフィスにいるメンバー複数人とRoundTableを使って会話するデモを見せた。

OCSと連携動作するIP電話なども登場予定

 マイクロソフトはOCSの導入作業を支援するシステム構築ベンダーや、連携して使用できるハード/ソフト機器を提供するベンダーも併せて発表した。システム構築のパートナは日本ユニシスや大塚商会といった9社。IP-PBXを提供するパートナはNECや沖通信システム、富士通といった8社である。

 OCSと組み合わせて利用するIP電話機も開発する(写真3)。USBに接続するIP電話機を使うと、Office Communicator上で電話をかける相手先を選択し、着信してから受話器を取るといったことが実現できる。

 単体で動作するタッチ・スクリーン搭載のIP電話機も投入する。OSとしてWindows CEを採用。OCSと情報をやりとりし、画面上でプレゼンス情報を確認しながら、電話をかけたり受けたりできる。連携するハードウエアの開発・販売メーカーは、NEC、ノーテルネットワークス、ポリコムジャパンなど7社。製品は各社が順次出荷するという。

 これらの新商品に併せて、Exchange Server 2007のSP1を投入する。OutlookとOCSとの間でプレゼンス情報を中継ぎするなど、OCSの機能を使えるように機能拡張する。SP1の提供開始は11月中旬の予定である。